こうした実体験から、筆者は現在、老後を英国で暮らすことは一切考えていない。お世辞にも先進国レベルの医療サービスとは言えないシステムに、老後の健康を委ねることは、恐ろしくてできないからである。

 しかし、先に述べた、超音波検査や内視鏡検査、手術までも、医療サービスの全てが無料であったことは、特筆すべきことであろう。医療費を払えない低所得層の人たちや、移民、難民の人たちでも利用できる制度は、いかなる社会的弱者をも取り残さないという、英国の人たちにとっての誇りであり、「魂」なのだろう。

 また、NHSの存続云々はもとより、英国のみならず、欧州全土で幼いスコット君のような子供たちが、大人の勝手な政治的意図によって、治癒の機会を奪われてしまうことには、許しがたい思いが募る。

 EU離脱後も、英国の人たちの健康と魂が、人々の納得の行く形で守られることを祈るばかりである。