デジタルが民主主義を壊す――。米国のトランプ大統領選出や、英国のEU離脱を決定づけた民主的プロセスは、有権者を狙い撃ちにしたデジタルキャンペーンにより歪められた。そんな論争が、英国で巻き起こっている。日本の有権者は、大丈夫か。私たちが日々何気なく利用しているデジタル機器やSNSに流す情報が不正に収集され、社会を壊していたとしたら。前編ではこの問題に取り組む英国人ジャーナリストのジェイミー・バートレット氏に、これまでの経緯などを聞いた。引き続き、個人情報の流出の怖さや、民主主義崩壊を防ぐため、市民レベルで何ができるのかを聞く。
デジタル技術の有効性は、実証が非常に難しいとも言われています。
バートレット氏: 無論、有効性を実証するのは困難です。しかし、広告業者は数十億ドル規模の資金を投じています。フェイスブックやグーグルなどの収益のほとんどは、ターゲット広告による収入です。つまり、これが有効であることを知り、信じてもいるということの証です。
同じ広告を数百万人に流すテレビ広告よりも、一人ひとりに数百万の異なる広告を流すことの方が、一般的に有効になっていきます。人々が不安を感じている時など、最適なタイミングで働きかければ、当然より良い結果が出るでしょう。もちろん、常に万人の思考を変えるということではありませんが、政治家は、格好のターゲット・有権者を、最適な状態とタイミングで捉えるチャンスを得られるようになる、ということです。
数千人、あるいは数万人の有権者を取り込むことができれば、僅差の選挙の場合、それは大きな意味を持ちます。政治家による市民との対話の形も変わり、全く新しい形の政治になるでしょう。長期的には、とても不健全だと考えます。政治家が人々の声に耳を傾け語りかけるのではなく、データを使って、人々の弱点を見極め、そこをつくという方式です。
こうした広告企業と、統治する側、つまり政権が手を携えてしまった場合、どんなことが起こりますか?
バートレット氏:企業がデータ収集するだけでも問題ですが、政府が企業と共同で行ってしまっては、一体誰が止められるというのでしょう。政府はより洗練された個々人のデータを取得することになります。
政府の批判を許さない政権が、こうした詳細なデータを基に先手を打って、政権へのトラブルを起こす人物をはじき出したとしたら、どうなると思いますか。当局や警察が、常に全ての人を追跡、行動を把握し、何も悪いことをしていないのに、アルゴリズムが「彼らはトラブルを起こす」と判定したと言う理由で、事前に逮捕してしまったとしたら。
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