日本人が知らないデジタル戦略の恐ろしさ

デジタル戦略の有効性を疑問視する声もありますが。

サニ氏:私は、人々の意見を変える効果があると思います。(SNS上の)「いいね!」を分析するアルゴリズムの結果(個人の嗜好など)は、身近にいる人のあなたに対する分析よりも、正確なこともあるのです。人々は、FBやオンライン上など、とにかく広告の力を過小評価していると思います。一般社会を念頭においた、ビルボード上の広告とは異なるのです。

 コカコーラの看板広告は、「あなた」個人ではなく、数百万の人たちをターゲットにしていますが、FBやオンライン広告は、あなた自身がターゲットです。1つ2つのいいね!の数ではなく、ネット上に存在するあなたに関する無数の情報、一個人としての「あなた」のアイデンティティがターゲットです。あなたの興味、年齢、出身地、髪の毛の色、好きな店や、ゲーム好きかどうかなど。

 こうした情報を基に、広告が形成されます。アルゴリズムは、あなたの怒りや喜びを把握しています。このようにして、誰が「反移民感情」に反応するのかを熟知するのです。

 例えば日本の嫌韓派ですが、日本国民の全てに向け「韓国人が悪いことをしている動画」は拡散されません。例えば、「権利を奪われたと感じている、労働者階級の日本人男性」がターゲットになるでしょう。そしてすでにある感情を持っている人だけに「あなたがこの仕事を得ていないのは、韓国人が奪ったからだ」と言うメッセージを伝えるのです。

 こうしたことも、選挙において強大な力を有し、規制すべきです。英国はようやく私たちの告発によって、議論が始まったところです。日本は国民投票を行う前に、この議論をすべきです。

 オンライン・ターゲットは政治に興味を持たない人たちを巻き込む有効性がありますが、悪用が可能であることも事実です。過剰な規制は良くありませんが、改憲と言う重大事項に至っては、ルールとなる基盤が必要です。

 特に日本の憲法9条は、あなたの国の根幹を成すものですから、その決断を行う国民投票で、一点の曇りもあってはなりません。現状の英国政治の、完全なまでの混乱を見てください。日本の方たちは、団結して国民投票のあり方を考えるべきです。結果による影響は、重大です。

日本の国民投票法において広告キャンペーンなどへの資金投入の上限が存在しないこと、また、今回米英で誤ったデジタル戦略により起きたことに対して日本では認知度が低い状況です。その中で、改憲に向けた国民投票が実施されることは、危険だと思いますか?

サニ氏:公正な投票法が定まっていない中での改憲は、危険です。民主主義は、法や司法制度、選挙法を拠り所とします。一つ一つの票が重んじられるべきなのです。でも、その票が多額の資金を投じる側に流れてしまうことは、危険なことです。

 公正性や公平性なしには、民主主義を有する意味がありません。どうでも良いことなら、民主制度を有する必要も、投票の自由も必要ないでしょう。だからこそ、断固として守らねばならないのです。

これからも、民主主義を守る「戦い」を続けるのですか?

サニ氏:私は24歳です。遊びに行くこと、楽しいことが好きですし、「民主主義の闘士」などとんでもありません。ただ、政治や民主制度は私にとって大切です。私は政治の不安定なパキスタン出身です。だからこそ、英国の民主主義により強い思いがあるのです。 

 他の24歳の人たちが人生を謳歌している時に、英国市民に不正について知って欲しいと考えています。若者に、政府の欺瞞をどう伝えるのか。私の告発によって、どれだけ制度が汚されたか、状況の改善に成さなければならないことがどれほど山積しているか、気づいて欲しいと思います。

あなたと同じ年齢の日本の若い人たちに、投票や選挙、国民投票、政治についてのメッセージはありますか?

サニ氏:私はまだ、悲しいことがあったら「となりのトトロ」を見る年代で、ポップも聞く、典型的なミレニアルです。ツイッターもインスタグラムもやりますし、特にインスタは地上で最も好きなものです。まだまだソーシャル・ライフを楽しんでいます。

 日本の若い人たちは、 SNSを活用し、政治の無秩序状態を常態化しないため、政治的な意見や不満を発言し、誰かと議論することを厭わないで欲しいと思います。変化を起こすのはたったそんなことだけでも良いのです。

 何かが間違っている、戦争に行くべきでないと思うのなら、そう発言し、表現してください。あなたの抗議は、SNSで伝える事ができます。友達と関わることでも良いのです。

 そして、何よりも投票してください。投票しないことは、20年後、日本がしていることに加担することになるのです。日本が憲法9条をなくし、戦争に加担できるようになったとしたら、それは若いあなたの責任です。

 国の行方を決めるのは、有権者です。多くの人たちが気づいていないことですが、世界では今20代が本当に変化を起こす力を持っています。政治に関わったり、議員に対し、あなたの価値観と反することをしないように、圧力をかけることができます。

 本来、政治家があなたに仕えるのであって、あなたが仕えているのでありません。彼らはあなたの票が頼りです。その一票を無くすようなことは絶対にしません。政治家が票を失うと感じれば、できる限りの力を使って死守するでしょう。政治家に、あなたの要求を見せるのです。彼らは皆、力を失うことに怯えているのですから。