離脱派陣営に、選挙法の上限を超える資金提供の疑惑

 「となりののトトロ」など、スタジオジブリの作品が大好きだと言うサニさんはパキスタン出身で、15歳の時、生まれ育ったカラチを離れて英国・バーミンガムに移住した。母親がパキスタンに嫁いだパキスタン系英国人であった事から、サニさんも、パキスタンと英国の二重国籍を持つ。

 とかく「離脱派のイメージ」は、反移民を主張する労働者階級の白人だが、移民で高学歴のサニさんがEU離脱を支持したのは、パキスタン人でもあること自体が大きな理由の一つだ。

 パキスタンは英連邦を形成した国の一つであり、連邦の南アジアや、アフリカ諸国などの優秀な人たちが、国によっては英国への観光ビザすら取得できずにいる。その半面、EU諸国の人々が国境を簡単に越えられることの不条理を常に思って来たと言う。「むしろ、より多くの人たちに英国を訪れて欲しい」と願っていた。

 大学を卒業したばかりのサニさんは、保守党の有力政治家らが結成した離脱の公式キャンペーン団体「Vote Leave」にボランティアとして参加し、黒人や少数民族の人たちに離脱を訴える役割を担った。しばらくの後、今度は若者を中心に結成されたボランティア組織「BeLeave」に移り、キャンペーンを続けながら、会計係も務めた。

 異変が起きたのは、投票直前のある日のことだ。突然、62万5000ポンドもの大金がVote Leaveからサニさんの団体に寄付された。当時地方からロンドンに通っていたサニさんは、これで高額な電車代がまかなえると喜んだが、Vote Leaveからほとんどの金額を、それまで聞いたことのない「AIQ」と言うデジタル企業に送金するよう命じられた。

 後日、Vote Leaveがサニさんが所属していた団体を、いわば「資金洗浄」目的に利用したのではないか、という疑惑が生じた。

 日本のアニメが好きだと言う英国人の若者は多いが、サニさんは政治も良く勉強している。日本の政治などほぼ報じられることもなく、総理の名前すら即答されない英国で、24歳の若者が、日英の議会制度が似ていることや、英語で「House of Councillors」と呼ばれる参議院のことを知っていたことに驚いた。

 なぜこんなに詳しいのかを聞くと、この情報時代、最低限の世界の政治情勢を知ることは、人々の義務だからだと言う。また、いくつかの先進国同様、日本でも最近、時代遅れな極右的レトリックを見かけるようになり、社会に深刻な分断を生む危険を感じて来たと話した。「日本版スティーブ・バノンもいるよね」と問われ、咄嗟に戸惑ったほどだ。

 インタビューは、一連の不正疑惑に関する、選挙委員会の調査報告が近く発表になると言われるなか行った。改憲に伴う国民投票や、日本の「告発者」である前文部科学事務次官の前川喜平氏について、特に後者に関しては、「出会い系通い」を報じられたことに自らの体験を重ね、時に憤りながら、堂々と答えてくれた。

 EU離脱を問う国民投票から2年。多くのものを失ったサニさんに、民主主義を死守する意義を聞いた。