インターネットを使った国際送金サービスで急成長を遂げるフィンテックが英国にある。トランスファーワイズだ。世界的にもフィンテックの旗手と目される同社だが、創業者でCEO(最高経営責任者)のヒンリクス氏は、英国の欧州連合(EU)離脱の影響を懸念している。英政府主催の国際フィンテック会議でも、盛り上げようとする英政府に対し、EU離脱に批判的なスピーチを展開し冷や水を浴びせた。ヒンリクス氏は何を懸念しているのか、話を聞いた。

 4月12日、英政府はロンドンで初の国際フィンテック会議を主催した。英国の欧州連合(EU)離脱で先行きが不透明な中、英国におけるフィンテックは市場規模で昨年約70億ポンド(約1兆円)、6万人を雇用する成長産業になっているとあって、主催者のハモンド財務相を筆頭にカーニー中銀総裁やフィンテック産業を牽引する名だたる顔ぶれが出席した。

 会議冒頭でハモンド財相は「我々は競争で優位に立つフィンテックのような分野を強化、成長させるためのチャンスをつかみ、またそれを最大限活かすために尽力しなければならない。つまり英国が、ビジネスを行うベストかつ最も魅力的な国であるとの評価を維持し、強化するということだ。(中略)英国が、フィンテック革命の先駆者でいつづけられるよう、ここにいるイノベーター、投資家、規制当局関係者らに、助力を願いたい」と述べた。

 ところが、このスピーチの直後、「これからもロンドンをフィンテック市場のグローバルハブに」と力を込める主催側に冷水を浴びせた人物がいる。英フィンテック大手トランスファーワイズのCEO(最高経営責任者)、ターベット・ヒンリクス氏だ。

 2011年にロンドンで創業したトランスファーワイズは、インターネットを使った為替手数料ゼロの国際送金サービスとして急成長を遂げている。同社発表によると、現在世界で100万人以上のユーザーが同社サービスを利用し、毎月10億ポンド(約1400億円)の国際送金が行われている。同社への出資者には英ヴァージン・グループ創業者のリチャード・ブランソン氏も名を連ねている。

 IT先進国であるエストニア出身のヒンリクス氏は、スカイプ創立当初の従業員で、のちに同社の戦略担当者となった。現在、エストニア首相のデジタル・アジェンダ顧問も務めている。トランスファーワイズは英国で最も成功したスタートアップの1社とも言われ、設立6年で黒字化を果たした。

 ヒンリクス氏は、ハモンド財相に続くスピーチの中で「私が今日、トランスファーワイズを設立するとしたら、おそらくロンドンは選ばないだろう」と述べた。理由は、英国のEU離脱である。

 更に同日、ヒンリクス氏はメディア各社とのインタビューで、ロンドンに継続して本社を置くものの、別に欧州拠点の新設をすることも名言した。最近、将来の不確実性を懸念する企業が大挙して英国から欧州大陸へ移転することを意味する「Brexodus(ブレクソダス)」なる新語もメディアの見出しを飾り始めている中での発言だけに、注目が集まった。

 発言の真意について、ヒンリクス氏に聞いた。