機密性の高い武器取引は不正の温床にもなる

武器輸出に関しては、人的被害がもちろん大きな問題としてありますが、ウェアリング博士は汚職誘発のリスクも指摘していますね

ウェアリング博士:まずお断りしておきますが、(英国において)サウジへの武器輸出に関する贈賄の疑いを認めた人も、法的に起訴された人もいません。ただし、英国のサウジへの武器輸出に関連した汚職の疑いは、その初日から存在しました。関与した複数の人物が、契約上の最終的な合意に至るには、交渉にあたる(サウジの)王子らに何らかのコミッションを支払う必要があると証言しています。 疑惑の中には英大手企業によるコミッションの支払いはもとより、英政府がこれらの支払いを黙認したという指摘もあります。

 10年ほど前、重大不正捜査局(SFO)による調査が行われましたが、英政府によって中止されました。(政府の主張は)「法の支配と国益のバランス」を計ることが重要だ、というような、驚くべき文言だったと記憶しています。 サウジにおけるこうした汚職疑惑は継続的に指摘され、問題であることはよく知られた話だと思います。つまり、こうした国々へ武器輸出を行うことで、汚職に巻き込まれるリスクは非常に高いと言えるでしょう。

武器輸出は安全保障に関わるという機密性のため、汚職を誘発するリスクが高いということでしょうか

ウェアリング博士:そういうこともあるでしょう。皆がプロセスを監視できるような、オープンな経済活動ではありませんから。サウジや湾岸諸国では、国や経済は「ファミリービジネス」であり、こうした国々でオープンかつ透明性のあるビジネスは行われません。

メイ氏など歴代の英首相は、サウジとの良好な関係が英国民を守るものだと主張していますが。

ウェアリング博士:とても表面的だと思います。サウジには、国際的なジハード主義者によるテロの問題が存在する一方、広域に及ぶインテリジェンスやネットワークによって(テロ)計画などを知る術があります。しかし、そもそも中東でテロが起こる背景には、世界的な政治や経済のシステムにおける問題 や、無政府状態の地域の存在などがあります。

 サウジはこうした中で「負の側」にいます。サウジのイエメン介入は、もともとそこにあった問題をさらに悪化させたのです。

 過激派組織「IS」(自称イスラム国)やアルカイダは、(サウジ主導の連合軍による)イエメン介入を大歓迎しています。イエメンの無政府状態は多くの人々を苦しめ、(サウジのイエメン介入による)無政府状態の拡大はテロリストを喜ばせます。イエメンのアルカイダは西側諸国にとって最も危険な組織です。西側諸国に対する大きな攻撃の多くが、イエメンに基盤を置く「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」によって計画されたものです。(介入は)テロリストへの大きなプレゼントのようなものです。

去年の総選挙の際、フェイスブックを利用する若い世代にもサウジへの武器輸出が重要な争点の一つとなりました。英国ではなぜ若い人たちも、この問題に関心を持っているのでしょうか。

ウェアリング博士:私も含め、イエメンで起こっていることへの認識を高めてもらえるよう、活動家は運動を続けています。イエメンで起きていることは本当に衝撃的なことで、少しずつでも認知されて(関心に)火が付くと人々は声を上げだします。

 また、(総選挙前に)マンチェスターでテロ攻撃があり、労働党が従来のテロに対するスタンスを変えて「我々の外交政策とこうしたテロには関連性がある」と明言したことも関係があるでしょう。それによって政府はこうした疑念に答えざるを得なくなり、サウジ問題が多く取り上げられました。

 こうした状況を、サウジ関係者は大変懸念していました。彼らは(武器取引などを)静かに行いたいのですが、選挙戦で争点の1つになったことは両国政府にとって問題だったのです。

野党各党は次々に、サウジへの武器輸出停止を選挙マニフェストに掲げました。武器輸出に反対する世論の高まりがそれほど大きく、各党ともそれを素早く察知したということでしょうか。

ウェアリング博士:イエメンでの英戦闘機による空爆は、ブレア・ブラウン両元首相(共に労働党)が可能にしたものです。サウジとの最後の大きな武器取引契約は2007年にブラウン元首相によって締結されましたが、交渉はブレア元首相が行いました。イエメンの問題が起こったことが、(武器輸出における)各党のスタンスに大きく影響したと言えるでしょう。