武器輸出の規制が事実上「骨抜き」に

英国の武器輸出規制とはどの様なもので、どのくらい厳しいのでしょうか。

デイヴィッド・ウェアリング博士(以下ウェアリング博士):英政府にはEU法、あるいは国際法を反映した規制があります。例えば、輸出先の国内で弾圧に使用される恐れや、深刻な国際人道法違反、また、紛争の長期化を引き起こすための使用の可能性がある場合などには、武器輸出のライセンスを認めないというものです。理論上は、こうした基準に違反した場合、武器は販売できないことになっています。しかし英国は、国内の弾圧目的に使用される可能性が明確な湾岸諸国の政権に対し、継続して武器を輸出しています。

 これまでに英国は、武器を輸出した後に(軍による市民の武力弾圧など)悲惨なことがその国で起こり、それを受けて輸出ライセンスを無効にしたことはあります。しかし、そもそもその国には販売してはならなかったのです。

 これらの基準はすべてリスクベースですので、(輸出ライセンスを事前に認めないためには)確実に基準に違反するというリスクを証明しなければなりません。そのため、理論上の規制は非常に厳しくても、(実際にリスクを事前に証明することは難しく)、現実的には常に違反されています。

サウジは国連が定める武器禁輸国の一つではありませんね。

ウェアリング博士:理解に苦しみます。2015年3月に始まったイエメン内戦では、アムネスティ・インターナショナルやヒューマン・ライツ・ウォッチなど世界の大手NGO、また、国連安保理の下で働く専門家らが収集した情報を見れば、(サウジによって)何度もこうした武器が国際人道法に違反して使用されていることがわかります。学校や病院、難民キャンプなど、民間人が無差別に攻撃されています。

 人道活動家らは、法医学的な証拠を現場で慎重に集めています。その彼らがこうした無差別攻撃を証言しているのです。(サウジが)国連の武器禁輸国リストに載っていないことは奇怪としか言いようがありません。記録は論争の余地がないほど明確なものです。

博士が知る限り、最も甚大な被害を与えた連合軍の攻撃はどんなものですか。

ウェアリング博士:記録された攻撃は多数あります。葬儀場への攻撃で100人以上が死亡しました。敵対する主要人物がターゲットだったと言われていますが、その周辺にいた人たちに対する配慮が全くなかったことは明白です。そのうえ、NGO職員から聞いた話では、サウジや連合軍がまず1発目の爆撃を行い、救急隊などが到着したところへ2発目が落とされた。ダブルタップ攻撃というものです。英国のジョンソン外相などの主要閣僚は、シリアのアサド大統領が同じことを行うと激しく抗議するのに、イエメンでの対応は異なるのです。

英国製の武器がこうした攻撃に使われたという証拠はあるのですか。

ウェアリング博士:いいえ。英国製の巡航ミサイルや、何年も前に輸出され、現在では禁止されているクラスター爆弾などが使用された記録は数件ありますが、どの攻撃にどの武器が使用されたかを詳細に記録することは容易ではありません。我々が知っていることは、サウジなどがこうした行為をしているということと、サウジ空軍の戦闘機の半分が英国製だということです。英国製の武器が使われていないということは、可能性として非常に低いでしょう。

高裁は、なぜ政府を擁護した判決を出したのでしょうか

ウェアリング博士:武器輸出を禁ずるにあたっては、様々な基準があります。その一つが、「武器使用に際し、国際人道法に深刻な違反をした明確なリスクの可能性がある場合」です。私たちは最低でも、イエメンでは英国製の武器が国際人道法に違反して使用される可能性のある「明確なリスク」に該当すると考えていました。そこで、政府の(輸出における)判断について高裁に司法審査を行うよう上訴したのです。

 高裁が輸出を認める判決を下したことには非常に驚きました。説得力のある説明や証拠を求めて判決文を読んだのですが、何も見当たらず、更に驚きました。「当裁判所は、このリスクの存在の有無、そしてイエメンにおいて言われているような様々な違反があるかは判断しかねる。そのため、政府の判断プロセスについて審査した。政府関係者から説明を受けたところ、彼らは最善を尽くしたと、自信を持って言える」とされました。これは、私にはとても弱い判決に思えました。

 サウジは英政府に対し、3年間「酷い過ちを犯してしまった、これを正すための努力をしている」と述べつつ、同じ「過ち」や、無差別攻撃が今も続いています。高裁の判決文はサウジ政府に対する批判はほとんど無く、すべて表面的な受け止め方しかされていないと、私は感じています。非常に残念な判決で、控訴する予定です。