英国でサウジアラビアへの武器輸出が人道上の問題で疑問視されている。日本は昨年末、英国と新型空対空ミサイルの共同開発に向けた連携を確認したばかり。日本が人道上、問題のある取引に加担するリスクはないのか。武器取引を批判している外交政策専門家、英ロンドン大学のデイヴィッド・ウェアリング博士に聞いた。

2016年10月、サウジ主導の有志連合軍はイエメンの葬儀会場に空爆した。連合軍は誤爆と認めている(写真:ロイター/アフロ)

 日英政府は昨年12月、ロンドンで開催された外務・防衛閣僚会合(2プラス2)で、新型空対空ミサイルの共同開発に向けた連携を確認した。2014年に策定された防衛装備移転三原則に基づく審査に通れば、将来的に日本からの輸出も可能となる。

 しかし、新型ミサイルの開発パートナーである英国では近年、政府が積極的に推進する武器輸出に対して、大きな疑問と反発の声が上がっている。2015年から続くイエメン内戦では、サウジアラビア主導の連合軍が反政府勢力と衝突している。そのサウジ軍が購入した英国製の兵器が、イエメンで国際人道法に違反する戦争犯罪行為や暴力に使用されている証拠があるとして、2016年、民間団体の武器貿易反対キャンペーン(CAAT)が英政府によるサウジへの武器移転の停止を求める訴えを起こした。

 この訴えに対して英高等法院は去年7月、政府判断を合法とする判決を下している。一方、民間団体は控訴を予定しており、英高等法院の判断直前に行われた総選挙においても、武器輸出問題は争点の一つとなるなど、依然として英国市民の関心は高い。

 武器輸出問題はSNS(交流サイト)のフェイスブックを利用する若い世代の有権者の間でも、大きな関心を集めている。昨年の総選挙では、投票前に民放ITVニュースが主催したメイ首相によるフェイスブック上でのライブ配信でも、視聴者からサウジとの武器取引の是非を問う質問が上がった。

 この質問に対してメイ首相は、「英国には武器売却に際し厳正かつ厳格な規制があり(略)武器がイエメン市民に影響を及ぼしたり、殺害したりという報告があった場合には、サウジ政府に対して調査要請を徹底し、ここから学ぶことにしている」と、おおむね従来通りの政府としての主張を繰り返した。

 だが去年9月の英ガーディアン紙の記事によれば、2015年以来、保守党政権下における、「人道上問題視される国々」への武器輸出額は、50億ポンド(約7500億円)相当に上るとされている。同記事では、欧州連合(EU)から離脱した後の英国では、人道上問題視されている国々への武器輸出が増加するのではないか、との指摘も紹介されている。つまり、英政府がEU離脱による経済のマイナス面を、巨額の利益を生む武器輸出で補おうと目論んでいるのではないか、という懸念だ。

 同紙は去年2月、武器輸出の停止を求める訴訟で提出された証拠文書として、ボリス・ジョンソン英外相の書簡を掲載している。2016年10月、イエメンの首都サヌアで葬儀場がサウジ主導の有志連合軍に「誤爆」され、民間人140人以上が死亡し数百人が負傷した事件があった。その書簡には、事件の後、ジョンソン外相がサウジへの武器輸出停止を検討していたフォックス国際貿易相に対して、輸出継続を促した様子が記されている。

 ちなみにジョンソン外相は、EU離脱を問う国民投票の際、離脱を推し進めた中心人物でもある。

(参考:葬儀の空爆を伝えた当時のアルジャジーラのニュース

 「英国の武器輸出規制は世界一厳しいもの」と胸を張ってきた英政府だが、国連は前述の誤爆を国際人道法違反であると非難している。また、欧州議会は2016年と2017年に、イエメンでの空爆を続けるサウジへの武器移転禁止を呼びかける決議を行い、賛成多数で採択した。この決議に法的拘束力はないとはいえ、欧州では同国への武器輸出と、イエメン内戦における深刻な国際人道法違反の関連を認知したことになる。

 日本が英国と共同で開発する予定の新型ミサイルは、独仏への輸出も検討されているという(参照:日本経済新聞2017年11月24日付「日本、英国とミサイル共同開発 防衛装備政策に転機」)。

 そのドイツでは先月、イエメンの戦闘に関わる国々への武器移転を即時停止した。サウジはドイツにとって武器取引の主たる顧客であるが、人道上の問題が指摘されるサウジやカタールなどへの武器移転をめぐり、ドイツでは野党が激しく追及していた。

 幼い子供や女性を含む、罪なきイエメンの一般市民が、サウジ主導の有志連合軍による攻撃の犠牲になっているという報告は、後を絶たない。英国によるサウジへの武器輸出は、本当に適正なのか。そして、日本と英国が新たな兵器を共同開発・製造し、英国が将来、人道上の問題や疑問が指摘されている国に輸出した場合、日本の技術が罪のない一般市民の殺害に使われるリスクはないのだろうか。

 英政府に対する訴えを起こしたCAATが一昨年4月に発表したリポート「恥ずべき関係・サウジアラビアの暴力に加担する英国」には、この疑念に対するいくつかの衝撃的な答えが記されている。

 リポートによれば、英国のサウジへの武器輸出は1960年代に始まり、70年代に巨額のオイルマネーを手にしたサウジは、さらに積極的に武器を購入するようになった。両国間の武器取引は、単なる商業取引にとどまらない。首相を含む主要大臣や、公式には関連が否定されているものの、時には王室関係者の頻繁なサウジ訪問まで伴うほど緊密な関係の産物であり、容易に変わらないものだと指摘している。

 また、イエメン内戦開始から半年あまり経った2015年10月、国連や国際NGO(非政府組織)が、サウジ連合軍による無差別攻撃の事実を指摘したにもかかわらず、英議会では提示された証拠を外務省の中東担当政務次官が「噂には注意しなければならない」と否定したとの記述もある。

 さらには、過去、サウジへの武器輸出に関連して英防衛大手による深刻な汚職が疑われたにもかかわらず、当局の調査が当時の政権によって中止されたことなども記されている。

 リポート執筆に当たったのは、ロンドン大学・ロイヤルホロウェイ校のデイヴィッド・ウェアリング博士だ。ウェアリング博士に、英国の武器輸出の問題点や、日本との関連を聞いた。