大手アパレルの三陽商会は10月28日、追加の経営改善策を発表した。不採算ブランドのさらなる廃止と、保有株式や美術品、保養所などの資産売却が柱だ。“止血”を優先した格好だが、肝心の成長戦略を含む新たな経営計画の発表は来年2月に先延ばしした。
経営改善策について説明する三陽商会の杉浦昌彦社長
経営改善策について説明する三陽商会の杉浦昌彦社長

 同日発表した2016年1~9月期決算は、売上高が前年同期比35%減の478億円となった。営業損益は83億円の赤字、純損益も81億円の赤字だった。英「バーバリー」のライセンス契約を失った影響から立ち直れず、新たな稼ぎ頭と位置付けた「マッキントッシュロンドン」や「ブルーレーベル/ブラックレーベル・クレストブリッジ」も苦戦した。

 大幅な赤字を計上したことにより、前期末で651億円あった自己資本は足元で506億円まで減少した。追加の経営改善策として、2017年3月までに保有株式を売却し、20銘柄から11銘柄まで減らす。保養所や美術品、ゴルフ会員権などの遊休資産も手放し、本社新別館ビルの建設計画を一時凍結する。これにより50億円の資金を確保する。

 当初、10月に発表するはずだった新経営計画の策定は間に合わなかった。都内で記者会見した杉浦昌彦社長は「現在、次世代を担う若手リーダーや現場社員と共に将来の姿を模索しながら検討しています。いましばらくお時間を頂きたい」と弁明。その上で、「構造改革と新経営計画の目指す方向性」と題した資料を公表した。

 資料中では「既存事業のチャネル展開拡充」「EC・デジタル事業の成長加速」といった方向性が示された。ただ、同業他社の多くがすでに同じ方向性の取り組みを進めている。ショッピングセンターやファッションビルの売り場は飽和状態に近く、リアル店舗を抱えながらのEコマース開拓に苦戦しているアパレル企業は少なくない。

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