日本のアパレル企業は株式上場しない方がいい
中国に集中している生産拠点はどうなりますか。人件費の高騰を嫌って一部がASEAN(東南アジア諸国連合)に移転しています。ただ、アジア各国も人件費は高まっており、いずれ採算が合わなくなってくるでしょう。
最後はインドかアフリカしかなくなりますね。そこまでいくと、地球レベルで海外生産依存のビジネスモデルが限界になるということです。そういう方向に進んでいる中で、日本への生産回帰は現実的な選択肢に入ってきています。勿論、これまでのような大量生産のインダストリー型は無理です。でも、クラフト型の小ロットのモノ作りなら可能です。
中国への生産移転が進んだのも、売れ筋を「早く大量に」作る方向に走ったからです。日本のアパレル各社が生き残るには、クラフト型として丹精込めたモノ作りに立ち返らなければならない。ユニクロはインダストリー型でいいです。実用品なので。
そういう観点から考えると、日本のアパレル企業は株式上場をしてはダメですね。クラフト型のビジネスモデルを目指すなら、月次や四半期など短期間の業績結果でいちいち株主からプレッシャーを受けていては、先に進めませんから。
アパレル業界は川上から川下まで分断されているがゆえに、全体として効果的な対応策を打ち出しにくいように見えます。
まずは不振の現状を正しく認識し、その上で、業界全体で議論する必要があります。このままでは業界が集団自殺しているのと同じですよ。だからこそ、集団再生する必要があるということに気付かないといけない。アパレルほど横連携しない業界も珍しいです。例えば、日本百貨店協会と日本チェーンストア協会が、一緒になにかやっているという話を聞いたことがありますか。
カギを握るのはテキスタイル(織物)業界だと思っています。川上と川下の間という立ち位置がいいですね。ニュートラルな旗振り役として、川上、川下、そして横の連携も広げるいい調整役になれる可能性があります。
大手アパレルは大規模なリストラに取り組みました。ただ、短期的なリストラで問題は解決しそうにありません。
店頭を訪れても、掘り出し物に出会うというわくわく感がなくなりました。当たり障りのない商品ばかりです。余分なブランドや店舗を切るのは、外部から来たしがらみのない人ならすぐにできますが、その先が難しい。商品を見直して店頭を面白くしつつ、それが採算の合わない水準まで肥大しないようバランスを取る。リストラの後、彼らは本当に難しい課題に直面することになるでしょう。
誰がアパレルを殺したのか。その未来は?
日経ビジネスオンラインでは、アパレル業界が深刻な不振に陥った背景を多角的に分析するとともに、既存概念から一歩踏み出す新たな動きを追う特集「誰がアパレルを殺すのか」を展開しています。本記事以外の特集記事もぜひお読みください。
併せて、日経ビジネス10月3日号「買いたい服がない アパレル“散弾銃商法”の終焉」もご覧ください。
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