各社のプロパー消化率は、あまりに低くて恐ろしくなる

確かに企画まで商社やOEM(相手先ブランドによる生産)メーカーに丸投げにしたことで、モノ作りの空洞化を招きました。

 その昔、決済や物流管理だけ請け負っていた時に商社が受け取るマージンは1~3%程度でした。それがOEMやODM(相手先ブランドによる設計・生産)をやると、15%取れるようになる。一方で、上代は下がってきていたので、素材にしわ寄せがきて、商品の質が劣化しました。

 個人的には「売れ筋」という言葉がすべてをおかしくしたと感じますね。だってそうでしょう。百歩譲って売れ筋を追いかけるのはいいとして、じゃあ、その売れ筋は誰が作ったのか、という話ですよ。

 アパレル企業が生き残るには、売れ筋を作る側に回るしかない。つまり、お客様に迎合せず、むしろ引っ張り、結果としてマーケットを動かす、という流れです。お客様からすると「迎合してほしいなんてお願いしていないのに、迎合したような商品ばかり出てきてつまらない」というのが現状ですから。アパレル企業は商社やOEMメーカーに「売れ筋を作ってくれ」とお願いしているので、罪が深いですね。

消費者の視線も厳しさを増しています。ファッションレンタルやフリーマーケットアプリが流行していますが、これは企業側の提示する「定価」に疑いの目を向けるようになったからだと思うのですが。

 自動車と同じように、若者の気持ちが服から離れています。今は服に金と手間をかけるのがむしろかっこ悪いという風潮すらある。ただ、これだけ古着のマーケットが存在し、それに耐えられる品質の服が流通しているという土台もあるので、これが残っている今のうちに手を打つしかない。

 アパレル各社のプロパー消化率(定価販売商品の売上比率)を見たら、あまりに低くて恐ろしくなります。確かに「定価とはなんだ」という気持ちにさせられますよ。小売店が販売促進のために値引きをするのと、メーカーが陳腐化した商品を切る意味で値下げするのではまったく意味が違う。それなのにセールが常態化し過ぎて、値引きと値下げの違いが分からなくなり、お客様にも同じように見えてしまっています。

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