イラショナルではなくエモーショナルに

 グレイツも現在、ニューヨークのブルックリンに1店舗を持つのみだ。今後2年以内に北米を中心に5店舗程度増やす予定だが、旧来のブランドのように大型の店舗や何百という店舗開発の予定はない。

 売上高は2014年から年率300%で伸びているという。2015年12月には日本のユナイテッド・アローズともコラボレーションした商品を出した。

「大切なのは顧客が何を感じるか、という顧客体験。顧客はモノを買っているのではなく、エモーションを買っている。エモーションからロイヤリティが生まれる。今のメガブランドが行っている商慣習や売買方法はイラショナル(非合理)であって、エモーショナルではない。エモーションとロイヤリティは、ブランドが成功するかどうかの一番の重要なポイントだ」(バベンジエンCEO)

 オンライン発ブランドは、中間マージンをなくし、その分を単純に安く提供しているから売れているのではない。不要なマージンを省いた代わりに、それを商品開発やデザイン、顧客サポートに費やす。各社が提供する商品の価格を見ても、それは歴然だ。

 例えば、グレイツの商品であれば、レザーのスリッポンが149ドル、エムエムラフルールであればメリノウールのニットが165ドルと、価格だけ見れば「安い」商品ではない。彼らが提示するのは「安さ」ではなく「リーズナブル(価格の妥当性)」なのだ。

 「顧客はだませない。適正な価格と価値を示さなければ利用者は離れていく」(バベンジエンCEO)という言葉は、旧来型のアパレルメーカーにとっては耳の痛い話かもしれない。何を作り、それをどう伝え、顧客の反応を次にどう生かしていくか、そこに真剣に向き合わない限り、「真のブランド」は作れない時代になってきた。

当連載は、日経ビジネス10月3日号「買いたい服がない アパレル“散弾銃商法”の終焉」との連動企画です。あわせてこちらもご覧ください。