雑誌が作っていた「セグメント」がなくなりかけているのですね。

渡辺:2000年代くらいまでは、例えばランチの時間に大学構内を眺めると「ギャル島」「アニメ島」「黒髪島」「ナチュラル島」と、何となく分かれていました。着ているもので友達集団を形成することが普通だったのです。今はそうした、誰が見ても分かるグループが存在しません。

洋服は「望んで手を伸ばして買うもの」から、「当たり前にある日常」に変化しいていったとも言えそうですね。

渡辺:今の学生の両親は共働き世帯が多かったり、おじいちゃんおばあちゃんが裕福だったりして、洋服に限らず、好きなものや高品質なものを、小さな頃から与えられることが増えました。

 現在30代半ばから40代の方々なら経験があるかもしれませんが、昔は、スポーツブランドやデザイナーズブランドを買いたくても親が買ってくれない、もしくは買ってくれたけれど模倣品だった、みたいなことがありましたよね。

 でも今は、ランドセル市場の盛り上がりを見ても分かるように、祖父母が手ぐすねを引いて、孫にプレゼントするのを待っている状態です。母親がインスタグラムに子供のコーディネートを投稿することもあったりして、ファッションに目覚める年齢が早い。

 私たちが、「大学デビュー」と呼んでいたようなものを、今の若い世代は小中学校時代に終わらせて、20代にもなれば、ファッションは日常に近くなっているのかもしれません。もう、満たされているのです。

何を着るかは「誰かに選んでほしい」

今の若い世代は、洋服には興味を持っているのでしょうか。

渡辺:ものすごく興味がありますよ。よく言われる「ファッション離れ」なんて一切ありません。おしゃれを楽しみたいという気持ちは強いんです。ただ一方で、ひねれば蛇口から出るほど情報があって、それをさばききれない状態でもある。「誰かに選んでほしい」と思っている。

 LINEは過剰と言えるほど使っているし、インスタグラムも利用率は100%に近い。着る服をどうしようといったことを、友達や彼氏と相談するなんてことは日常茶飯事です。

 買いたいエネルギーはあるので、「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」や「メルカリ」を見るけれど、結局は買わないという人も少なくありません。

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