太田:よい原材料を適正に使う、ということです。それに気付いてちゃんとやっているのは、大手アパレル企業ではユニクロくらいではないでしょうか。

 回転寿司のようなビジネスモデルで成功するには、2つの方法があると思っています。1つは、生の本マグロを持ってきて、少し薄く切って提供する方法。もう1つは、冷凍マグロを分厚く切って提供する方法。日本のアパレル企業が何をやっているかと言えば、冷凍マグロを薄く切って提供しているんですよ。

 仮に衣料品の原材料が「冷凍マグロ」から「本マグロ」に変わったからといって、その差分はいくらもないでしょう。それなのに、なぜそれができないのでしょうか。

 原材料費を落としてコストを下げる習慣が染みついちゃっているんです。たとえ良い原材料を使ってもコストを上げない方法はあります。ユニクロはSPA(製造小売業)として、海外の提携工場で商品を製造することで、それを実現している。逆にほかの多くの企業が実現できないということは、それだけ彼らが思考停止に陥っている、ということなんです。

日本の産地を最も多く歩き回っているのは、シャネル

なぜ、ユニクロ以外のアパレル企業にはそれができないのでしょう。

太田:産地に入り込んで、頭下げて、一緒にモノ作りをさせてくださいと言えないのではないでしょうか。

日本の繊維産業は衰退し、市場規模も小さくなっています。それでも、日本のモノ作りには可能性があるのでしょうか。

太田:例えばシャネルなんかは、日本の産地を最も多く歩き回っているんじゃないでしょうか。僕がどの産地に行っても「この前、シャネルが来ました」と言うわけです。セリーヌも多くの商品で日本に頼っていると聞きます。

 パリコレを見渡しても、日本の生地がなければ成り立たない。味噌や醤油と同じで、世界の人たちの方が、日本の産地の魅力や価値に気付いている。

 例えば合繊織物を生産する第一織物などは良い例です。現在は欧州から韓国まで、海外に絶大な支持を得ている企業で、高級ダウンジャケットで知られる伊モンクレールも第一織物の合繊織物を使っているのは、有名な話です。(参考記事:ルイ・ヴィトンを魅了する男の苦言

 彼らの生地を使ってコストが上がったとしても、そのくらいはほかでいくらでも吸収できるのではないでしょうか。それなのになぜ踏み切れないのか。コスト増を渋って安い生地を選べば、その違いは確実に顧客に伝わってしまう。そんな思い切りの悪いモノ作りをしていれば顧客は離れていきます。

 東北から九州まで、縫製工場や繊維メーカーなど、良い企業はたくさんあります。彼らにお願いしたからといって、とんでもない値段になるかというとそんなことはない。

 シャネルが使っている生地が、すべて商品代金を数十万円にしなくては成り立たないなんてことはないのです。良いモノを作ったら必ず高くなるというのは違う。国内のアパレル企業の多くは、楽な仕事をしすぎているというだけだと思います。