業界不振が深刻化する一方、新しいビジネスモデルで成長する新興企業も確実に出てきています。

軍地:誰でも「もう家にあるもの」は買わないですよね。アパレル企業は「その人にとって価値のある商品」を考え、掘り起こしていくべきだと思います。それを実践し、この厳しい時代でも成長を続けているアパレル企業は、確かに存在しています。

 例えばTOKYO BASEの谷正人CEO(最高経営責任者)は、情熱と合理性を併せ持つ、この業界で稀有な経営者です。定価での販売比率が60%を下回ったブランドとは取り引きをやめるという合理性を持っていますが、「じゃあ、60%を超えるために一緒に売りましょう!」という情熱の部分も持ちながらやっているわけです。

「メイド・イン・ジャパン神話」が改革を鈍らせる

軍地:銀座を歩いていても、表参道を歩いていても、悲しいのは、海外ブランドの広告ばかりだということです。イタリアでもフランスでも、目抜き通りや空港では、自国のファッションブランドが一番広告を出している。日本ではコムデギャルソンやイッセイミヤケ、ヨウジヤマモト以降、なぜインターナショナルブランドが育たなかったのかと。

 日本も本来、グローバルのサプライチェーンに入っていくべきでした。経済産業省や日本アパレル・ファッション産業協会(JAFIC)などが主導して、「J QUALITY」という日本の縫製や繊維工場を紹介するサイトを立ち上げましたが、純正の日本製にこだわるあまり、海外へアピールできていない印象です。多言語対応できているけど、海外からどれだけの人がこのサイトを見に来ているか、甚だ疑問です。「英語が話せない工場経営者を、誰が海外とどうマッチングするんだ」というような課題も山積しています。

 海外市場で発信して、海外の消費者が「これ日本製なんだよね」と誇らしく思ってもらえる、というようにするのが本質のはずです。デニムや一部シルクなどは海外からの発注も増えていますが、日本製の良さを世界でブランディングできているとは言えず、数ある生産拠点の1つに過ぎません。内向きの「メイド・イン・ジャパン神話」が、私たちの改革への一歩を鈍らせていると言えるでしょう。