商品単価の下落という意味では、ユニクロの登場が大きかったように思います。

軍地:誤解を恐れずに言えば、最初ユニクロは「破壊者」でした。カシミアのニットやダウンジャケットの値段を下げる、いわば「仮想敵」ですね。でも、今のユニクロは柳井正・ファーストリテイリング会長兼社長が掲げるコンセプト「ライフウエア」を基に、消費者ファーストで商品を作っています。否定しようがないんです。

「服にお金をかける理由がわからない」という感覚すらある

軍地:消費者も「ユニクロだから恥ずかしい」という感覚はもうありません。銀座を歩いている人の多くが持っているのが、ハイブランドや百貨店ではなく、ユニクロのショッピングバッグです。「高い服を着ている=偉い」ではなくなっているのです。

 逆に言うと、高い値段が付いているのか理由が分からないからハイブランドがほしくないんです。10代~20代の間では、「服にお金をかける理由がわからない」という感覚すらあります。

 何をしてアイデンティティを出すのか、ということでしょうね。バブル世代は「高級ブランドで着飾って、ソアラに乗って、プリンスホテルに行く」といった外部のブランドを自分の身にまとうことがブランディングとされていました。

 でも、今やスマホと自撮りの世界です。モノで自分をブランディングするのではなく、例えば「美味しい料理を作ったり」「友達と楽しい時間を過ごす」方が、生き方としてたくさんの「いいね」をもらえる。東日本大震災を経験しているから、今の10代は「価値が永続しない」という感覚を持っており、そうした傾向が強くなるのでしょう。

次ページ 船が沈まないと考えている人もいる