1万円のワンピースを「みんなで買う」感覚
小泉:若い女性にヒアリングをしていると、例えば1万円の新品のワンピースを買う時、それが後に5000円で売れると思えば、新品購入に踏み切る女性は多い。1つの商品を「みんなで買っている」という感覚なのだと思います。
仮に、その時、自分の財布から1万円を出して購入したとしても、それを後に中古品としてメルカリに出品し、5000円で売れれば、その商品は5000円で買ったことになりますよね。5000円で買った人が、次に2000円で売ったとしたら、その人は3000円で買ったことになる。つまり1万円のワンピースは、3人で分担して買ったとも考えられます。
1万円なら高いと思っていた服が、結果的に安く買えるわけですから、服を買う人口は増えるはずです。「今までの価格で、今までのように洋服を買う人」は減っているのかもしれませんが、それは「若者が服を買わなくなった」とか「服に興味がない」ということと同義ではないと思います。
ツイッターなどのSNS(交流サイト)には、「メルカリに慣れると、新品を買う気がしない」といった投稿もあります。
小泉:クローゼットの中にあるものが減らない限り、新しいものは入らない。以前、アパレル企業の方は、「クローゼットに空きが生まれれば、その分、自分たちにチャンスが増える」とおっしゃっていました。そしてメルカリを「クローゼットの空きを作るサービス」とポジティブに捉えるユーザーも多い。
もともとファンの多いブランドは、より自分たちの洋服に触れるチャンスが増えるという風に喜んでくれている方が多いように感じます。一方で、言葉は悪いかも知れませんが、特徴のないブランドの方が、僕らのサービスを気にしていたり、利益が少なくなるのではないかと心配をしていたりする気がします。

店頭で見えない「実需」データが分かる
「ブランド」を確立できている企業は二次流通に好意的、ということですね。
小泉:そうですね。憧れのブランドがあっても、少し高くて買えないと思う人は多いでしょう。そのエントリーとしてメルカリが機能している部分もあると思っています。
大好きなブランドをメルカリで少し安く買うことで、そのブランドのことをもっと好きになることもある。反対にメルカリで自分の所有物を売ることで、現金が生まれ、そのお金で今度は新品の洋服を買うことができる。
既存のアパレル企業と協業して、マーケットを大きくする方向もあり得るのでしょうか。
小泉:あくまで可能性の話ですが、例えば二次流通のデータをもっとオープンに使うことも考えられると思います。
例えば、ファストファッションは短期で売り切り、次々と新しい商品が出てきます。在庫ロスを限りなくゼロにできる一方で、買いたいと思っていた消費者が買えなくなるという機会ロスにもつながるケースも多々あるでしょう。
メルカリでもファストファッションは人気です。「数週間前に店頭にあった、あのワンピースがほしい」といったニーズがあるからです。一方、そうしたニーズは、当のアパレル企業は把握していないのではないでしょうか。
二次流通側で値崩れしているかどうかなどの価格データや、どういったものが長くニーズがあるのかをつかめれば、企業にとって次の生産に生かせる貴重なデータになるかもしれません。二次流通で需要を見ることで、店頭では見えなかった「実需」が見える化できる可能性があります。
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