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「子供の眼差し×大人の都合」で事業は成り立つ

「これは売れる」というマーケティングの発想から生まれた商品ではないのですね。

遠山:最近、社内でよく話しているのは、「子供の眼差し×大人の都合」という概念です。子供の眼差しとは、こんなことを思いついちゃったというトキメキだったり、純粋にやりたいというキラキラとした妄想だったり。だけれども、ビジネスや事業はそれだけではうまくいきません。マーケティングのような大人の都合と掛け合わせて、初めて成り立ちます。

 「やっぱり、のり弁当でしょう」というのは、子供の眼差し。一番好きそうなものを挙げたわけですよ。まずは、自分の思いや体験があります。新規事業を考えるうえでは、ここを起点にするといいと思います。大事なものは何なのか――。

のり弁当「海」(1080円、税込)。おかずは、弁当箱からはみ出すサイズの鮭と、ちくわの磯辺揚げ。玉子焼きは、おふくろの味をイメージし、あえて焦げ目を付けている。銀座の店舗は複合商業施設「GINZA SIX」の地下2階にある。

 会社だと、どうしても最初に「売り上げ」や「利益」が来がちです。でも、本当にそれが正しいのでしょうか。私は、よく会社やブランドをヒトに例えます、「スマイルズさん」とかね。スマイルズさんの一番大事なことは、決してお金ではないんです。4~5番目ぐらいであって。

共有しづらい「形容詞」が価値を示す

遠山:そんなことを考えていて、「形容詞に価値が宿る」と思い至りました。形容詞とは、好きとか、美しいとかです。

 例えば、レストランのメニューには、食材や産地、価格など必要なことは書いてあります。だけれども、レストランは、それだけでなくて、シェフが始めた思いやスタッフが心がけているサービスなどがあります。お客様も、お腹を満たすためだけでなく、誰と来てどんな話をしようと考えています。「そちらのほうが大事だ」とみんな分かっているのに、仕事になるとメニュー側の話になってしまう。材料はなにで、数量は何個で、価格はいくらで、という具合に。

 結局、固有名詞は共有しやすいのです。でも、形容詞は表現しにくく、会議では共有しづらい。しかし、本来は形容詞に大事なことが含まれているし、かなり意識しないとそのことを思い出せません。