シリコンバレー型の起業家輩出制度

 ただ、新規事業コンテストを開催すればイベントとして盛り上がるが、年1回の募集では持続的な取り組みにならない。そこで、新規事業が次々と生まれる「シリコンバレーのエコシステム」を社内に移植することが検討された。そこから生まれたのが『次世代事業開発プログラム』である。

 このプログラムでは、社内の新規事業審査の「年1回」という頻度が見直された。シリコンバレーでは、特別なコンテストがなくても、24時間365日切れ目なく誰かがアイデアを議論している。それと比較すると、年1回というタイムスパンはあまりに長い。そこで、24時間、社内ウエブでアイデアのエントリーを受け付け、翌月には審査する体制に改められた。社員はいつでも思い立った時に提案できる。

 第1次審査を通過後、応募した社員は業務ミッションの20%を新規事業の開発に充て、うまく進捗して第2次審査を通過すれば、今の仕事を離れて100%新規事業に集中する。この過程で、提案者は少なくとも1年間新規立ち上げにコミットできる。優れたアイデアは賞状を貰うだけでなく、実際に事業化の予算がつく。各プロジェクトの進捗度合いに応じて、シリコンバレーのベンチャー企業がベンチャーキャピタルやアクセラレーターから受けるようなサポートを利用することもできる。

 峰岸氏によると、この仕組みによって、グループ内のアイデアが円滑に集約されるようになった。そして、事業化をサポートする本社人材の経験値も高まった。社内でサポートできる人材がいない分野では、外部の協力企業やコンサルタントが招聘された。

 次世代事業開発プログラムがスタートした2014年のエントリー件数は210件だったが、2016年に700件に増えた。この期間、事業化ステージまで進出したのは合計12件だった。約2%の「成約」比率はベンチャーキャピタルの投資決定ペースに似ており、手をあげる社員は多くても、事業化に進むことができるのはごく僅かなことが分かる。事業の質を高めるためには当然といえる。次世代事業開発プログラムから独立が認められた「卒業生」第1号が、学校の教師と保護者の連絡を最適化する『うさぎノート』である。

 このような取り組みは他社でも見られるが、リクルートの特徴はプログラムを圧倒的に長期間継続していることだ。新規事業から成果が現れないと、せっかくの試みを中途半端にやめる企業が多いが、継続は強みである。