「100年に1度の大変革」と言われる自動車のEV化や自動運転化の競争が象徴するように、新しいテクノロジーへの対応が企業の命運を分ける時代に突入している。大変革への対応に欠かせないのがオープンイノベーションである。その進め方を実践的に解説した書籍『新たなる覇者の条件』の著者が、最新の産業ニュースを踏まえながら、オープンイノベーション成功のポイントを紹介する。

 このコラムでは、拙著『新たなる覇者の条件』のエッセンスを紹介しながら、オープンイノベーションを成功させるための5つのステップを解説している。3回目の今回のテーマは、「知のダイバーシティを推進する」と「事業出口を柔軟に探す」である。

ベンチャーとの提携は株価対策?

 ベンチャー企業に対して投資、買収、事業提携を仕掛ける大企業が増えている。AI、IoT、バイオなど「今風」の分野で先端にいるベンチャーとの提携はマスコミに大きく取り上げられるので、大企業の担当者にとって社長の覚えがめでたくなる機会だ。また、ベンチャーにとって、提携は資金調達と知名度の向上につながる。両者にとって、まさにウィン・ウィンといえる。

 しかし、ベンチャーとの提携に本気で取り組んでいる大企業がどれだけあるだろうか。成果が出るまで時間がかかるベンチャーとの提携は、短期間しか担当しない社員では手に負えないし、カルチャーやスピード感の違いによって大企業とベンチャーの提携がうまく進まないことは多くの研究で明らかになっている。

富士フイルムの「本気度」

 この状況下、富士フイルムは再生医療分野で、ベンチャー企業、中堅・中小企業との提携を猛烈な勢いで進めている。同社が買収した企業は、再生医療用皮膚のJ-TEC、iPS細胞の米セルラー・ダイナミクス・インターナショナル、試薬・臨床検査薬の和光純薬工業、インフルエンザ薬の富山化学工業(いずれも買収前の社名)などで、2018年3月には、JXTGホールディングス傘下の2社(米企業、日本企業1社ずつ)を約850億円で買収した。

 富士フイルムの買収戦略は長期的な事業戦略とマッチした「本気度」が高いものといえる。同社は「イノベーション実現のための5つのステップ」のうち、「組織をオープンにする」「知のダイバーシティを推進する」「事業出口を柔軟に探す」を広く取り入れている。