世界初の建機IoTサービス『コムトラックス』

 変化にいち早く手を打っているのがコマツである。

 コマツは、建機市場において世界で初めて実用化されたIoTである『コムトラックス』を構築した。コムトラックスは、油圧ショベルなどにセンサーやGPS通信機能を付けて、各建機が今どこにいるか、どのように使われているかの情報を遠隔で確認し、サーバーに蓄積するシステムである。

 建機の位置情報以外に、エンジンが動いているか止まっているか、残っている燃料の量、1日の稼働時間などが、コマツのサーバーで把握できる。建設現場は広大で、都心から離れていることも多く、遠隔で状況確認するニーズは大きい。

 2001年から新製品に通信機器を標準装備した当時の坂根正弘社長(現相談役)は、2015年のウェブ記事において、コムトラックスが生まれたきっかけを次のように語っている。

 1998年ごろ、盗んだ油圧ショベルを使って銀行のATMを破壊して現金を強奪する事件が多発した。同社は事件について直接の責任がなくても、コマツ製品が強盗に使われたら、イメージが悪くなる。対策として、「建機にGPS通信機能をつけたらどうか」というところから議論がスタートした。

 坂根氏は「センサーを装備した飲料の自動販売機では、どの商品がどれだけ不足しているか遠隔操作で分かる」と技術者から聞き、「じゃあ、同じことを建機でやったらすごいことができるじゃないか」と回想している。

 当初の発想は、通信機を使って建機の位置情報をリアルタイムに把握することだったが、エンジンやポンプのコントローラーからも情報を集めれば、建機が稼働中かどうか、燃料の残量はどのくらいかも分かる。これなら、燃費改良のアドバイス、消耗品交換時期の連絡、ファイナンス、盗難防止など、新しいメンテナンス・サービスができるので、価格が上がっても顧客の理解を得やすい。

 2004年に中国市場でも通信機を標準装備とし、それが思わぬ効果を生んだ。その頃の中国では建機が盗まれる事件が多く、事業者の頭痛のタネだった。通信機付きのコマツ製品は「盗まれにくい」と評判になり、ついでに盗難保険料まで安くなった。