「100年に1度の大変革」と言われる自動車のEV化や自動運転化の競争が象徴するように、新しいテクノロジーへの対応が企業の命運を分ける時代に突入している。大変革への対応に欠かせないのがオープンイノベーションである。その進め方を実践的に解説した書籍『新たなる覇者の条件』の著者が、最新の産業ニュースを踏まえながら、オープンイノベーション成功のポイントを紹介する。

 筆者は先頃オープンイノベーションに関する解説書『新たなる覇者の条件』を上梓した。同書のサブタイトルは「なぜ日本企業にオープンイノベーションが必要なのか?」である。日本を代表する51社の大企業を取材し、数百人のビジネスリーダーへのヒアリングをもとにして、大きな変化の先駆者になるための道筋を示した。

 同書の発売とタイミングを合わせるかのように、8月下旬、トヨタ自動車(以下、トヨタ)はライドシェアサービスを運営する米ウーバーに5億ドル(約550億円)を出資すると報じられた。トヨタの発表によると、自動運転モビリティサービス専用車両を協力して開発することが出資の目的である。今年3月、ウーバーの自動運転試験走行車が、米国で道路横断中の歩行者を跳ねる事故を起こし、同社は公道での試験走行を中止していた。ライドシェアサービスは自動運転車との相性が良く、トヨタの出資は試験走行の再開につながる可能性がある。

 また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックにおいて、トヨタは東京臨海部などで自動運転の実証実験を行い、選手村で自動運転車を選手の移動手段として使う計画を公表している。

自動運転車の開発はトヨタの堅実な風土とマッチしない

 このようにトヨタは自動運転車を積極的に開発しているが、これは同社のこれまでの経営方針と反しているように見える。それは「最高の品質のクルマを作り、ユーザーに安全安心を提供する」という考え方との矛盾である。

 交通事故は日本だけでも年間で50万件近く起きており、特殊な事例を除けば、たとえ死亡事故でもニュースにならないことが通常である。しかし、自動運転車がもし公道で接触事故を起こせば、特に怪我人が出なくても、「自動運転車が事故、危険露呈」というような見出しが躍り、大体的に報道されるだろう。注目度が高い新製品の宿命である。

 自動運転は未成熟な技術であり、これからどんなアクシデントが起こるか分からない。ましてや、成長著しいといっても経営が不安定なウーバーと組んで開発を行うことは、トヨタにとって大きなリスクである。

 しかし、未熟でリスクが高いといっても、自動運転車は社会を大きく変えるポテンシャルがあり、自動車産業のリーダーを自認するトヨタはどうしても参入するべき分野である。

 では、どうやってリスクと「安全安心」の折り合いをつけるか。ヒントは戦前、トヨタの創業ストーリーにある。