ハリウッド版を除けば、『ゴジラ』シリーズが国内で新作が上映されたのは12年ぶりとなります。

加島:それだけ行き詰っていたのでしょう。こういう時は、原点に立ち返るに限ります。

『ゴジラ』の原点に。

加島:そうです。原点に立ち返るというのは、存在理由は何なのかをもう一度考え直す良い機会になります。これは会社の立て直しでも同じことが言えます。自分たちは何のために存在しているのか、そこを突き詰める。本作が初代ゴジラに近い内容だったのも、オマージュという意味合い以外に、原点に立ち返る要素があったのかもしれません。

 それだけでなく、きちんとリポジショニングもできています。『ゴジラ』はいつしか怪獣映画=子供向けとなっていた。だが、本作は子供が見に行ったわけではありません。多くは大人が見に行っている。子供が楽しめるというよりも大人が楽しめる映画へとリポジショニングできた作品だったと思います。

いたずらに「自分色」を出す経営者の愚行

引き継ぐということの難しさは、文化・伝統だけでなく経営にも言えることだと思います。

加島:引き継ぐときのメッセージが何なのか、そこをしっかりと見極める必要がありますね。会社を立て直すために交代するのであれば、やはり変革は必要です。ただし、どんな変革が必要なのかはその新たなリーダーがきちんと理解しなければなりません。

 例えばシャープ。ここまで業績が悪くなれば、前任者を否定しないと変われないでしょう。ただ、どの部分を否定すべきなのかをきちんと考えないといけません。逆に、何を残すべきなのか、歴史も含めて、しっかりと考える必要があります。

 ベネッセホールディングスで原田(泳幸・元会長兼社長)さんがやった改革は、その方向性が間違っていた。ベネッセの存在理由として一番大事にすべきは「赤ペン先生」でしょう。ただ、営業活動に注力すべく、人員の配置転換をしました。赤ペン先生の存在価値を下げるような改革は、この時必要だったのでしょうか?ここはメスを入れるべきところではなかった。

 いたずらに「自分色」を出すために変えると、本当は変えてはいけない大事な強みまで失ってしまうリスクがあります。「前社長のやっていたことをそのまま踏襲します」という社長では、組織が変化対応についていけない可能性が高い。変革はバランスが難しい。

米ゼネラル・エレクトリック(GE)は、ジャック・ウェルチ氏やジェフ・イメルト氏のように、歴代のトップが「創造的破壊」を実現できる人にバトンを渡しています。自分を後継者に指名した前任者の出身母体の事業もあっさりと売却してしまう。そのドライさが強みでもあります。

加島:GEは1人のトップが20年近く務めるのが前提としてあります。創造的に破壊しても、なお成果が出るまでに時間がある。その長い期間があるので、次世代の若手をじっくりと見極めることができる。創造的破壊と人材育成、これがGEの経営の真骨頂です。

日本の企業には「2期4年で交代の不文律がある」というような企業も少なくありません。

 その期間内で、本気で会社を改革するのはなかなか難しいと思います。日本と欧米では企業経営における価値観が大きく異なります。逆に、このスタイルだからこそ日本企業は持っている部分があるのかもしれませんが。

ゴールを先に決めて動く欧米型と、目の前にある課題を解消する日本型

日本と欧米の考え方の違い、『シン・ゴジラ』の映画の中にも出てきました。特にカヨコ・アン・パタースン(米国大統領特使、石原さとみ)の役どころなど、その典型ですね。

加島:カヨコは日本にルーツがある一方、米国の大統領特使という立場で日本政府に対峙しなければならなかった。米国と日本の価値観のぶつかり合い、国同士だけでなく、自分の中でもぶつかり合って揺れる点が面白かったです。

 欧米は、何か物事が起きたときに根本治療を目指す傾向にある。そして相手をドミナント(支配)しようとする。まずは最終的なゴールを決めて、そこに向かって突き進む。

 一方、日本人の場合は、取りあえず目の前にある小さな課題を片付けていく傾向が強い。今この危機を脱して、次はまた次の人たちが考えればいいんだというのが日本人に多い考え方ですね。『ゴジラ』は東京のど真ん中に残っちゃうんですけれど(笑)。

 企業経営者に関しても、つないでいくことが大好きで、それが大事なんです。なので、2期4年での交代でも問題ないのかもしれません。米国人はゴールを先に決めるがために、先走ってしまってそのゴール設定自体が間違うこともある。象徴的なのがベトナム戦争です。思い込みの激しさが、判断を間違える。

日本人リーダーの行動の1つとして、里見祐介(農林水産大臣、平泉成)がフランスの駐日大使を前にずっと頭を下げ続けるシーンが印象的でした。

加島:自分の役割をきちんとこなす、日本人はそこには長けている。その細分化された役割をしっかり把握し、やりきる。ここに関してはものすごく優秀と言えます。ただ、そこに責任を背負わされると急に保守的になって、誰も動かなくなってしまう。