多くの人が知っているように、地球上の生物は長い年月(世代)を経て、変化を遂げてきた。その過程で、環境に有利な性質を持った生物が生き残り、不利な性質を持った生物は途絶えてきた。簡単に言うと、この変化のことを進化と言う。

 首が短かったキリン「キリ子」が、ある日いきなり首が長くなってそれが子どもに引き継がれたわけではない。首がそれなりに長いキリンのほうが相対的に多くの子どもを残せたから、だんだんと首が短いキリンが居なくなっていったのだ。

 簡単に言えば、その環境で残せる子の数で進化の方向性は決まると言っていい。

 もし、目がなくなるという変化があったとしよう。一見すると不利に思える。だが、例えば洞窟の中で生息する生き物からすれば、視力はそれほど必要ない。目を作るために必要な養分などの「コスト」を子に「投資」できるので、洞窟に生息する生物の多くは眼が退化していることが多い。つまり、色々な機能を持った「全部載せ」が有利というわけでは決して無く、時として退化することも立派な進化と言える。

 日本における「進化」という言葉をめぐるこの勘違いは、話題の「ポケモン」に由来するのではないかと個人的に考える。ポケモンのレベルが上がって形態や性質が変化することも、生物学的の言葉で言えば、「進化」ではなく「変態」なのだ。

 エリート街道まっしぐらの矢口副長官も、もしかすると幼少期にはポケモンに興じていたのかもしれない。

 パンフレットのプロダクションノートでは、ゴジライメージデザインを担当した前田真宏氏へのインタビューが掲載されている。そこから引用すると「徐々に変態もしていきますが、僕の解釈ではこのゴジラは海から上がってきてミューテーション(突然変異)が急激に起こって、みるみる変化していく」とある。変態という言葉が使われていることから、制作陣が進化という言葉の意味を完全に誤解していたわけでは無いと信じたい。

 ちなみに、体を構築する体細胞の突然変異によって起きる形態変化の代表例は癌(悪性腫瘍)である。

【疑問3】
ゴジラは「この星で最も進化した生物」なのか
→、遺伝子数や遺伝情報の量が、生物の知能・機能といった性質と関係があるという知見は得られていない

 理研発のビッグニュースということで、安田龍彦・文科省研究振興局基礎研究振興課長(高橋一生)によると、ゴジラには「人類の8倍もの遺伝子情報」が含まれていたそうだ。この報告を受けて、尾頭ヒロミ・環境省自然環境局野生生物課長補佐(市川実日子)が、「ゴジラが、この星で最も進化した生物と確定しました」と続ける。

 ここでの「人類」という言葉を「ヒトという種 Homo sapiens」と理解するか、「地球上に存在する約70億人の全てのヒト」と理解するかで判断が分かれるが、ここではヒトという種として見た場合を考えてみよう。

 ヒトのゲノム、すなわち全塩基配列の解読を目的としたヒトゲノムプロジェクトによって、ヒトの核DNA(ゲノムサイズ)は約30億塩基対あり遺伝子数は約23000個あることが明らかとなった(International Human Genome Sequencing Consortium 2004)。

生物種と遺伝子数・遺伝情報量の代表例(筆者作成)

 この表を見ても明らかなように、ヒトは遺伝子数・遺伝情報の量どちらを考えたとしても、極端に多いとは言えない。さらに、遺伝子数や遺伝情報の量が、生物の知能・機能といった性質と関係があるという知見も得られていない。

 遺伝子解析技術の進歩は素晴らしく、かつて十年以上を要したヒトゲノムのシーケンス(配列決定)も、今や数日で終わるようになっている。なので、ゴジラがヒトの8倍のゲノムサイズをもつ生物だったとしても、全ゲノムの配列決定に「何年かかるかわからない」なんてことは無いだろう。