劇中でも、日本政府がゴジラの存在を正しく認識する契機になったのは、Youtubeやツイッターなどのソーシャルメディアであることが描かれている。

 もっともその情報の疑わしさから、ほぼすべての政府閣僚がゴジラの存在を確信したのはテレビ中継後、であった。何となく、現実世界でゴジラが出没したとしてもそうであろうと納得できる展開である。ゴジラ上陸後の、群衆がスマホを片手に写真や動画を撮影する姿が頻繁に登場する点も印象的かつリアルに感じられた。

 今や現場にいる誰もが速報を出せる時代であり、「シン・ゴジラ」の世界ではツイッターが大活躍していることだろう。

読者との交流から新たな記事が誕生

 日経ビジネスオンラインの連載でもソーシャルメディアを活用した新たな取り組みを試みている。ツイッターに、いわゆる“中の人”を入れたことだ。日経ビジネスオンラインのツイッターアカウントを眺めてみていただきたい。ファンのみなさんと「シン・ゴジラ」についてコミュニケーションを交わす公式アカウントの姿をご確認いただけるはずだ。

 運用を開始してから、多くの方にアカウントをフォローしていただいている。

▼シン・ゴジラ特集開始前後のフォロワー数推移

 ここでの交流から新たな記事が生まれもした。また、フォロワーの方々が連載や記事の存在を拡散させてくれたおかげで、多くの新しい読者を得た。ちなみに現時点での閲覧状況トップは、防衛大臣の石破茂氏から寄稿いただいた、「石破氏:ゴジラを攻撃した戦車はどこから来たか」である。当特集全般に言えることだが、通常の記事と比べて、PCよりもスマホでよく読まれているようだ。ソーシャルメディア中心に拡散し、記事が閲覧されていることがうかがえる。

 ソーシャル分析のツールを確認すると、石破氏の記事の反響の大きさが分かる。
ツイッターで記事公開日に「おそ松さん」「ネコ化」などのキーワードと同水準のボリュームでリツイートされていることに違和感を覚えつつも、これは読者のみなさんに刺さるものがあったことを証明している。また、記事が読まれる時間帯や読者ひとりあたりの読了状況なども通常の水準より高く、「シン・ゴジラ」への関心度の高さを見ると同時に、日経ビジネスオンラインの読まれ方にも新たな広がりを感じることができた。

 ソーシャルメディアはあくまでコミュニケーションツールだ。その中で話題になるということは、すなわちそのコンテンツが良くも悪くも魅力的なもの、引きが強いものであることが大きな要因になる。「シン・ゴジラ」は監督のこだわりや製作陣のディテールへの追求を十分に感じられる名作で、それゆえソーシャルで大いに拡散した(もちろん完全に内容を隠蔽したプロモーションなど、その他施策の効果も大きいと思う)。

 ここで私の仕事に立ち返りたい。「シン・ゴジラ」の製作陣と同様に、一本一本の記事を生み出す編集者の想いは妥協を許さない真摯なものだ。だからこそ、それらのコンテンツを世の中にどう広めていくことができるのかを我々はずっと考えている。

 数は多くなくても良い。そのコンテンツを潜在的に必要としている読者のもとに、どうすれば届けることができるか。

 未だ答えは見つからず、日々試行錯誤と失敗の連続ではあるものの、「シン・ゴジラ」というコンテンツが世の中に広がり様々な議論や意見交換を生む姿を見て、少し勇気をもらった。

 正しい過程を経て作られたコンテンツは必ず誰かに必要とされる。そしてそれを届ける仕組みは既に存在している。

読者の皆様へ:あなたの「読み」を教えてください

 映画「シン・ゴジラ」を、もうご覧になりましたか?

 その怒涛のような情報量に圧倒された方も多いのではないでしょうか。ゴジラが襲う場所。掛けられている絵画。迎え撃つ自衛隊の兵器。破壊されたビル。机に置かれた詩集。使われているパソコンの機種…。装置として作中に散りばめられた無数の情報の断片は、その背景や因果について十分な説明がないまま鑑賞者の解釈に委ねられ「開かれて」います。だからこそこの映画は、鑑賞者を「シン・ゴジラについて何かを語りたい」という気にさせるのでしょう。

 その挑発的な情報の怒涛をどう「読む」か――。日経ビジネスオンラインでは、人気連載陣のほか、財界、政界、学術界、文芸界など各界のキーマンの「読み」をお届けするキャンペーン「「シン・ゴジラ」、私はこう読む」を開始しました。

 このキャンペーンに、あなたも参加しませんか。記事にコメントを投稿いただくか、ツイッターでハッシュタグ「#シン・ゴジラ」を付けて@nikkeibusinessにメンションください。あなたの「読み」を教えていただくのでも、こんな取材をしてほしいというリクエストでも、公開された記事への質問やご意見でも構いません。お寄せいただいたツイートは、まとめて記事化させていただく可能性があります。

 119分間にぎっしり織り込まれた糸を、読者のみなさんと解きほぐしていけることを楽しみにしています。

(日経ビジネスオンライン編集長 池田 信太朗)