溝渕:一瞬、瓦礫をどかすホイールローダーが画面に出ますが、戦車にドーザーをつけたのくらいでないとビルの残骸は除去できないし、あの台数ではどう見てもビルを倒したあと、悪路走破性はなきに等しいポンプ車やタンクローリーが走る道は空けられないでしょう。と、つい思ってしまうわけです。

実は、私もそこは見ていてほぼ唯一ひっかかった点でしたが、もう最後のクライマックスで気持ちが盛り上がりに盛り上がっていまして、「いけいけいけー!細かいこと気にすんな!」となってましたね。

溝渕:もちろん、わたしもです(笑)。あら探しをしても面白いことはないので、むしろどうやったんだろうと考えた方が楽しいですよね。「厳密な計算は無理としても、ある程度、接近路を空けることを計算してビルを倒し、ゴジラを倒した」という考え方もありますし。

 ついでに言うと、現場にポンプ車のアームが林立していましたが、アウトリガー(車体を安定させるために横に張り出す脚)を展開するにはあんなに寄せてはいけません。もともと、広い場所が必要なので工事の際も気を遣うところです。今回は緊急事態なので四の五の言えないんですけど、事故が起こればヤシオリ作戦自体が失敗になるので、もっと間隔を開けたいですね。さらについでに言えば、走りながらアウトリガーを展開してはいけません。危険です。

あれは操縦者に「アウトリガー、展開!」ってセリフを言わせたかったんでしょうね。格好良かった。

溝渕:都心に入ってから気になったのは、ゴジラが進んだエリアはかなり地下構造物、埋設構造物が多いので、あれだけの重量が載ると、沈み込んであんな風に歩けないのでは…という点です。都心部でゴジラが歩きづらくなっても面白かったかも知れませんね。

そのネタは、首都高速湾岸線の多摩川トンネルを踏み壊す場面では見事に表現されていましたよね。ネタバレサイト(※)で指摘されていたので、2回目に目を皿のようにして見たら…。

※ 記者が見たサイトはこちら。「『シン・ゴジラ』の感想を集めてみた(ネタバレあり、見てない人にはないしょ)」。トンネルに触れられた箇所はこちらです。

水柱の上がる間隔、チェックしてました

溝渕:そう、羽田の南側にある海底トンネルですね(別記事の地図参照、こちら)。あそこは沈埋函(ちんまいかん)を使って作ったトンネルなので、ゴジラがその上を通って、函と函のつなぎ目が裂けて、トンネル内の空気が吹き出す演出がありました。

やっぱりお気づきでしたか。

溝渕:水柱の上がる間隔を見ていましたが、100m(沈埋函の一函の長さがおよそ100mなので)くらいでしたかね。「うん、だいたいそのくらいだな」と。

あのシーンを、そんな目で見ている人がいたのか…。

(※沈埋函を使う海底トンネルについては、こちらが分かりやすく解説しています)

溝渕:海底トンネルの話が出たので、ひとつ指摘しておきますと、冒頭のアクアラインのシーン。あのトンネルはシールド工法で作られています。トンネルはコンクリートの「セグメント」と呼ばれる部品で丸く囲われている。ということで、壊れる場合は、映画のように上面(天井部)だけが抜けるのではなく、トンネル全体の壁が一気にぐしゃっと潰れるかな。スタッフの方は、落盤のようなイメージをしたのだろうなと思います。もちろん、絵としてはあれで凄くいいと思います。

なるほど。

溝渕:本業関連になるとついついマニアックにアラを指摘してしまいますけれど、土木関係者の目から見ても、大筋から細部まで、とてもよくできている映画だと思いますよ。

 土木、とくにモリナガさんとの本で出てきたような、インフラ系の大きな仕事に関わる人間って、意外かもしれませんが、初代ゴジラにもつながる「荒ぶる神」を意識することがよくあるんです。地震だったり、台風だったり。

おお。

溝渕:そういう人が、大事にしているのは工事のディティールだったりするのですよ。