溝渕:見ますね。だって、3回くらい見ないと内容が把握出来ないでしょう。1回目はこっちもあの映像に「うわあ、何ですかこれは」と、興奮しすぎているし、セリフが速い。2回目でやっと落ち着いて見られて、3回目でディティールが見えてくる。

分かります。

溝渕:やっと「元の」ゴジラにもどったんじゃないかと感激しました。いわゆる「レジェンダリー版」のゴジラ、「GODZILLA ゴジラ」(ギャレス・エドワーズ監督、製作はレジェンダリー・ピクチャーズ、配給はワーナー・ブラザース、2014年7月25日公開)の、ギャレスがすごく頑張って、初代をリスペクトし、本多猪四郎(ほんだいしろう・初代「ゴジラ」監督)を踏襲した。でも、あれは“対決モノ(ゴジラが他の怪獣と戦う設定)”になっていたし、アメリカ映画は家族愛がないと誰も見ない、ファミリー客が動員できないという縛りがあった。そういう要素を全部切り落として、非常に初代ゴジラに忠実に作っていましたね。

さっき、東宝の山内エグゼクティブ・プロデューサーから伺ったお話(「看板商品再生劇として見る『シン・ゴジラ』」、このインタビューと同日に取材した)と怖いくらい重なりますね。聞かれたら喜ぶと思いますよ。

溝渕:初代はいろいろな言われ方をしていますが、「静」のゴジラ、暴れないゴジラ、“基本的に”動かないゴジラ、という印象が強かった。対決モノだと、どうしても、ライバル怪獣と取っ組み合いますから、過剰に動いてしまうわけです。「シン・ゴジラ」は、そういうアクションがあまりなくて、それが良かったと思います。昔のゴジラ、小さい頃リバイバルで見たときの怖い印象を再び感じました。

動かないから、いいんですね。

溝渕:マンションで逃げようとした家族のシーンがありましたよね。会議室ばかりで悲惨な状況を描けていない、とか、言い出す人がいるみたいですが、どこを見ているのでしょうか。ああいうふうに、合間合間に悲惨な状況を、短い時間ですが的確に、精緻に入れている。もろに描写しない分、東日本大震災ではないけれど、「日常生活が一気に崩壊する様」をあのシーンで見せている。とても非情な描写でもありますが、実際に起こっていた話。

ポンプ車についてはひとこと申し上げたい

ゴジラがむやみに暴れるのではなく、状況を描いているから怖さが染みる。

溝渕:ええ。でかくなったゴジラが「暴れない」からこそ、「蒲田くん(物語の初期に登場する第2形態)」の珍妙な動きが効いてきます。よくあんな設定を考えたなあと思います。あの呑川を遡る、漂流物、プレジャーボートが押し上げられる描き方はさすが樋口(真嗣 ひぐち・しんじ「シン・ゴジラ」監督)さんだと思って感動しましたね。2012年公開の「のぼうの城」が、水攻めの表現が問題になって公開が延期になったことがありましたが、それも、樋口さんの水や波の演出がリアルで凄みがあるからこそでしょう。

たしかに、あの震災から時間が経ったからこそ可能になった表現ではありますね。

溝渕:間違いなく、震災直後なら上映出来ません。少し社会が落ち着いて、ある程度冷静に見られるようになりましたし、同時に、忘れかけている記憶を思い出させる、とてもいいタイミングでの映画になったと思います。最後は、まさに1F(福島第一原子力発電所)収束のイメージでしたし。とはいえ、実はちょっとポンプ車はいただけないところがありました。

えっ。

溝渕:まず、ロング(ブームが長いコンクリートポンプ車)を持ってきたのはいいのですけれど、瓦礫の中、あの位置まで近づけるのは画面から見る限り相当難しそうですよね。

写真協力:ヤマコン(ウェブサイトはこちら)。ご協力をお願いしましたら「了解です!映画に出たのと同じタイプがよろしいですよね!」と、即答、即応いただきました。ありがとうございました。「プツマイスター社製の38mスーパーロング車輛です」とのことです。

うーん。