CGが折り紙を進化させた

こういった図面はどのようにして思いつくのですか。

三谷:立体のものと展開図は、CGやCAD(コンピュータによる設計)技術の進化が寄与していると思います。真っ直ぐではない折り線を作るには、CGを使った設計や先ほどのカッターのような、新たなツールの誕生が不可欠です。

新たな造形がこのようにして生み出されるのですね。

三谷:CGとしては極めて稚拙なものです。ただ、(研究対象として)やっている人が少ないのが現状です。日本では折り紙に関して専門的に取り組んでいる研究者は…5人もいないと思います。

 私も折り紙研究を専門としているわけではありませんし、ミウラ折りの三浦先生も航空宇宙工学がご専門です。いろいろな分野の専門家が、その研究の中で折り紙技術を活用しているというところでしょうか。

幅広い分野の方が別のルートから折り紙を研究するというのは面白いですね。折り紙技術の応用で、日本は世界をけん引しているのでしょうか。

三谷:残念ながら、答えは「No」です。実は今、世界の国々が折り紙の研究に力を注いでいます。

え、日本だけではないんですか?

三谷:そうです。折り紙の文化は海外でも「origami」とそのままの名称で普及しています。カラオケ=KARAOKEみたいなものでしょうか。

 文化的なものから、最先端技術などへの応用など、研究対象はさまざまです。

最先端技術とはどのような分野なのでしょう。

三谷:ひと口に言えませんが、航空宇宙や機械産業、バイオ産業から建築など多岐にわたります。

日本がorigami界をけん引していないとのことでしたが、どの国が一番研究が盛んなのでしょう。

三谷:米国ですね。

やっぱり米国ですか。

三谷:そうです。科学財団などが後押しをしています。ロボットの開発にorigami技術を使っています。

 素材などの基礎研究にも応用されています。1つ例を挙げると、形状記憶のような作用を使い、熱を加えると勝手に折りたたむ構造のものを作るなど様々です。

 タンパク質の分子構造にorigami技術を活用し、新たな特性を探るなどの研究も盛んと聞きます。多くは基礎的な研究ですが、将来どこかで開花する予感はありますね。

もはや紙ではないんですね。

三谷:そうです。日本語だと紙という定義なのでしょうが、海外では折って何かを作るという概念で広まっています。

 来月には台湾で国際的なorigamiの展示会が開かれます。技術というより芸術の観点でのもので、私も出展します。各国がどのような新しいモノを見せてくれるのか、今から楽しみです。

日本が覇権を握るカギとは

柔道もJUDOになって、海外の選手がオリンピックでメダルを取るようになりました。柔道が日本だけのものでなくなったことは残念でしたが、それだけ国際化したとも捉えられます。そのうえで今年のリオ・オリンピックでは男子が全階級でメダルを獲得する復活劇がありました。折り紙も国際化している中で、再び日本が覇権を握ることはできるでしょうか。

三谷:子供をはじめ、もっといろんな人に折り紙に関心を持ってもらえたら、変わるかもしれません。

 折り紙の起源には諸説ありますが、日本ではお供え物や贈り物を紙で包む慣習に由来すると聞きます。江戸時代には、今の鶴や紙風船など、立体的な造形が広く知られていたようです。

 平面の紙を折ることで立体的なものを創る。創造性の高い文化ですね。脳の活性化にもつながると思います。

そもそも、日本以外で子供が紙を折って遊ぶ慣習はあるのでしょうか。

三谷:各国ごとに、少しずつ違う文化があるようです。日本では鶴などの動物や奴さんなんかを折りますが、西洋では動物の形に折るというよりも、モザイクや幾何学模様を折って楽しむことが多いようです。

紙を折るという単純そうな文化でも、その対象が国や地域によって異なるのは興味深いですね。

 三谷先生は折り紙に関する著書を出していますが、その本に収録されている折り紙の展開図をご自身のホームページでも公開されていらっしゃいます。

三谷:自分だけにとどめず、折り紙体験をもっと広く伝えていければと思っています。

 日本には折り紙が文化として深く浸透しています。これは長所でもあり、短所でもあると考えます。

 みんなやったことがある反面、折り紙というものに対する固定概念が強い。折り紙というと、文房具屋さんで売っているあの折り紙で作るものと考える人が多いでしょう。その時点で、考えを狭めている。

 もっと折り紙を自由に捉えてorigamiとして広まっていけば、映画のように日の丸技術として世界に貢献できる何かに化けるかもしれませんね。