オープンイノベーションと現場力

作中では、巨災対が練った作戦が見事に当たり、ゴジラが鎮圧されます。チームのあり方以外に、あのプロジェクトが成功した要因として挙げられるものはありますか。

梅澤:オープンイノベーションと、その結果としてのクリエイティブな作戦、そして作戦の実行を支えた現場力ではないでしょうか。

 巨災対チームは、ゴジラのデータをわざと外部に広く提供していきます。理研に分析させるだけではなくて、世界中の知恵や分析のためのリソースを活用しようとしています。ドイツの研究所がスパコンを開放して、一緒にゴジラのデータ解析に取り組む。政府主導とはいえ、積極的にオープンイノベーションに取り組んでいる様子が描かれています。

 また巨災対がゴジラ鎮圧のために導き出した「八塩折(ヤシオリ)作戦」は極めてクリエイティブな内容でしたよね。それもその作戦を極限状態で完璧に遂行する現場力がしっかりと描かれていた。矢口は自衛隊が出動する時に、「我が国の最大の力はこの現場にあり」と語っています。それも現場力の強さを見事に言い表していますよね。

 そして、自衛隊と米軍、民間企業が力を合わせて、極めて難易度の高い作戦が、完璧に実行されていった。ヤシオリ作戦の中のどれか1つが失敗しても、ゴジラは鎮圧できなかったはずです。ほぼ唯一のチャンスに、兵器も弾薬も血液凝固剤も、持てるものをすべてつぎ込んで、使い果たして、ようやく作戦が形になった。それらを支えていたのが、現場力であり、日本の組織力そのものであるのだと思います。

プロジェクトチームは1つでいい

この先、東京五輪に向けて行政や企業はプロジェクトチームを立ち上げていくはずです。こうした現場力の強さは、そういったシーンでも生かされそうですね。

梅澤:1つだけ注意したいのは、チームを作りすぎてもいけないということです。

 例えば大企業などでは、ある中長期の目標を達成するためにプロジェクトチームをたくさん立ち上げたりします。あっという間に10くらいはプロジェクトチームが出来上がるんです。そうすると人材も分散するし、権益争いも起こります。幅広い部門と連携しないと何も成し遂げられないから、調整コストばかりがかかってしまう。こうなっては、プロジェクトチームを作った意味がないということにもなってしまいます。

 巨災対が成功したのは、同じようなチームがほかになかったからでしょう。自衛隊も、民間企業も、米軍も、巨災対の描いた作戦を実行するために動いたわけです。リソースも集約されますよね。だからこそ成功したんです。あんなチームをいくつも作ってしまうと混乱してしまいます。3.11でも対策チームがたくさんできたけれど、結局は十分には機能しませんでした。そうした事態に対するアンチテーゼもあったのではないでしょうか。

読者の皆様へ:あなたの「読み」を教えてください

 映画「シン・ゴジラ」を、もうご覧になりましたか?

 その怒涛のような情報量に圧倒された方も多いのではないでしょうか。ゴジラが襲う場所。掛けられている絵画。迎え撃つ自衛隊の兵器。破壊されたビル。机に置かれた詩集。使われているパソコンの機種…。装置として作中に散りばめられた無数の情報の断片は、その背景や因果について十分な説明がないまま鑑賞者の解釈に委ねられ「開かれて」います。だからこそこの映画は、鑑賞者を「シン・ゴジラについて何かを語りたい」という気にさせるのでしょう。

 その挑発的な情報の怒涛をどう「読む」か――。日経ビジネスオンラインでは、人気連載陣のほか、財界、政界、学術界、文芸界など各界のキーマンの「読み」をお届けするキャンペーン「「シン・ゴジラ」、私はこう読む」を開始しました。

 このキャンペーンに、あなたも参加しませんか。記事にコメントを投稿いただくか、ツイッターでハッシュタグ「#シン・ゴジラ」を付けて@nikkeibusinessにメンションください。あなたの「読み」を教えていただくのでも、こんな取材をしてほしいというリクエストでも、公開された記事への質問やご意見でも構いません。お寄せいただいたツイートは、まとめて記事化させていただく可能性があります。

 119分間にぎっしり織り込まれた糸を、読者のみなさんと解きほぐしていけることを楽しみにしています。

(日経ビジネスオンライン編集長 池田 信太朗)

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。