企業が一大プロジェクトを実行する場合、3つの要素のうち何が欠けているケースが多いのでしょうか。

梅澤:3つ目の要素でしょうか。トップが現場に任せきれないということは多いように感じますね。例えばある企業が組織を横断するようなプロジェクトチームを作ったとします。任務を遂行するまでには、色々な横槍が飛んでくるものです。既存事業とカニバることもあるでしょうし、顧客を怒らせてしまうこともある。すると社内のプロジェクトチーム以外の部門から横槍が飛んでくるわけです。チームとは関係のない役員が文句を言うこともあれば、チームとは異なる現場からクレームが寄せられることもある。こうした混乱から、トップがチームを守ることができなければ、メンバーは右往左往してしまいます。

 シン・ゴジラの場合は、里見総理臨時代理の補佐官が、巨災対のチームリーダーとしっかりつながっていて、赤坂内閣官房長官代理が、官邸がぶれないようにしっかりとコントロールしていた。それが勝因となった。企業の中でも同じような構図が作れないと厳しいでしょうね。

チームのリーダーに権限を委譲して、トップはそれを守って育てる。そういったトップは日本の企業にもいるのでしょうか。

梅澤:古きよき時代の日本の大企業の経営者の1つの型とも言えるのではないでしょうか。今の企業経営者にもこうしたタイプはたくさんいますよ。

つまり日本企業でも巨災対のようなプロジェクトチームが作れる、と。

梅澤:やる気になればできるはずです。現場のリーダーを選ぶのも、それを守りきるのもトップの仕事です。チームのメンバー選びはリーダーに任せればいいわけだし。ただ、平時の方が、こうしたチームを特例的な扱いをするのは難しいでしょうね。有事の方がそういうやり方はどの組織もやりやすい。

とはいえ、通常、企業の一大プロジェクトともなると、巨災対のような「変り種」の人物が選抜されて集まることは少ないのではないでしょうか。それぞれの部門が優秀な人材を出すだろうけれど、それは異能というよりも、組織の論理や秩序を何よりも重視する、いかにも出世しそうなタイプの人材だったり。

梅澤:大企業でも、社を挙げた一大プロジェクトなどを手がける場合にはエースが集まることが多いですよ。それも本流のエースだけではなくて、一匹狼だけれども実力はある、というタイプの人も集まったりする。どんな人材を選ぶかは、プロジェクトを仕切るリーダー次第でしょう。

 ただ組織の本流にいる人は規定演技は上手でしょうが、想定外の事態や極限状態で新しい作戦を立案して遂行する場合には、変わり者の方が向いているかと思いますね。ですから、そういうプロジェクトチームが組めるかどうかが勝敗を分ける。

巨災対と、リオ五輪閉会式のチームジャパンと

異能ばかりを集めると、今度はチームを1つにまとめるのが難しくなりそうです。けれども巨災対はチームが空中分解することもなかった。リーダーの矢口の実力なのでしょうか。

梅澤:まあ、あの作品の場合は、国と首都の絶体絶命のピンチだったので、チーム内で問題意識は共有できていたはずです。けれども企業が平時に進める改革的なプロジェクトなどであれば、リーダーシップの有無は問われるでしょうね、変わり者を集めれば集めるほど。

 シン・ゴジラのような状況では、やはり優秀な異能が集まって、問題意識や危機感を共有できれば、自律的にチームが動いていきます。そして、そういったチームは、実は世の中には少なくはありません。本当に能力のある人が集まって、問題意識を共有できて、彼らのクリエイティビティを阻害しないようなリーダーがいる時には、チームは自律的にいい方向へと動き出す。

 推測ではありますけれど、この間のリオ五輪閉会式の日本の引き継ぎセレモニーなどは、理想的なチームワークが発揮できたのではないでしょうか。とても有能なクリエイティブディレクションチームがあったことは間違いありません。メンバーの一人ひとりが持つポテンシャルを最大限に引き出せたからこそ、あのようなセレモニーを生み出せた。才能ある人材が集まり、良きリーダーがいて、チームとして機能した。巨災対に通じるものがありますね。

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