実力主義でチームが編成された

どういった点が理想的なのでしょう。

梅澤:まず1つ目は、巨災対が実力主義の専門家で組織されていることにあります。作中で巨災対は、「霞ヶ関のはぐれもの、一匹狼、変わり者、オタク、問題児、鼻つまみ者、厄介者、学会の異端児…そういった人間の集まり」と表現されています。

 通常であれば組織の中で浮いてしまう扱いづらい人材なのかもしれません。けれど、そんなことは気にしないで実力主義で第一線の専門家を集めたところ、それぞれの人材が見事に自分の役割を果たしていった。それも省庁横断で、学者も交えた官学横断チームでもある。実力を基準に、組織の壁を超えてチームを作ることが、何よりも重要だということです。

 2つ目が、優れた現場リーダーに権限を委譲し、集中させたことでしょう。作中であれば、主人公であり巨災対事務局長の矢口(蘭堂)がその存在です。内閣官房副長官だった矢口は、後に特命大臣となってゴジラ対策について取り仕切る役割を担います。

 そして3つ目は、トップがこうした体制を構築した後、しっかりと現場をバックアップしたことにあります。作中のトップと言えば、里見(祐介)総理大臣臨時代理でしょう。閣僚11人が亡くなり、派閥の年功序列で臨時総理大臣に就いた里見は、無能なトップの象徴として途中まで描かれていました。

 けれど最後には彼がフランスなどに対して外交努力を重ねて、ゴジラを鎮圧するための時間を稼いでいたことが明らかになります。そのうえ、作戦が完了した後は解散総選挙に打って出て潔く引退した。作中では赤坂(秀樹・内閣総理大臣補佐官、後の内閣官房長官代理)が「最初からそのつもりだった」と、里見臨時総理大臣の思惑を代弁しています。

 現場の優秀なリーダーに仕事を任せたうえで、フルバックアップして、責任は取る。こういうトップがいたからこそ巨災対のプロジェクトは成功したのです。

 整理をすると、まずは実力者を集めて、チームのリーダーに権限を委譲する。そのうえで、トップはチームを守ることと、責任を取ることに専念する。この3つがそろうことが、巨大プロジェクトを成功させるために必要な要素であり、シン・ゴジラの巨災対ではまさにその様子が描かれているわけです。

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