石破:軍であれ、警察であれ、実力組織であることに違いはありません。しかし、その2つは全く異なるものです。安全保障を語る上において、基本中の基本がほとんど誰も理解していない。だから私は、何故、ゴジラがギャーと暴れて、自衛権が行使されるのか全く分からない。

映画「シン・ゴジラ」の中では自衛隊に防衛出動が出されたが…©2016 TOHO CO.,LTD.
映画「シン・ゴジラ」の中では自衛隊に防衛出動が出されたが…©2016 TOHO CO.,LTD.

ゴジラは害獣であって、外国勢力とは言えないからですか?

石破:そうです。自衛権を行使するための三要件というのが法的で決まっています。我が国に対する国または国に準ずる組織からの急迫不正の武力攻撃があること。他に取るべき手段がないこと。その実力行使は必要最低限にとどめること。これが三要件です。映画で出てきた「防衛出動」というのは自衛権の行使に他なりません。だからこの三要件が満たされない限り、自衛隊に対して防衛出動が下令されることはあり得ません。

 去年、安全保障政策が国会に提出された時にあれほど議論したのに、映画とは言え、なんであんな平気に、防衛出動の下令となってしまうのか…

あのゴジラをどっかの国がリモコンで操っていれば…

シン・ゴジラは映画としてリアルだ、リアルだと評価されていますけど、自衛隊に防衛出動させる法的な部分が簡略化してしまっているということですか。

石破:いや、間違っているでしょ。もし、あのゴジラをどっかの国がリモコンで操っていれば、国または国に準ずる組織からの我が国に対する武力攻撃とみなせるので、自衛権の行使はまったく問題ありません。でも映画の中ではそうはなっていないから、害獣駆除として災害派遣で対処すべきなのです。イノシシとか、クマとか、そういう害獣を駆除するのと基本的には全く同じです。クマが爪でガーンと攻撃するのと、ゴジラが火を吐くのは一緒ということです。

 国家とは何か、ということを別の言い方をすると、軍隊と警察という実力組織を独占する組織体だということです。これが国家なんです。マックス・ウェーバー流に言えば「暴力装置」なんです。かつて仙谷さん(由人氏=民主党政権における内閣官房長官)が言って大問題になったんですけど、仙谷さんはマックス・ウェーバーをちゃんと読んでいた。実力組織と暴力装置というのは、本質は同じです。要するに軍隊と警察という実力組織、マックス・ウェーバー流に言えば、暴力装置を独占的に所有する主体が国家です。だから国家とは何か、国家主権とは何か。警察とは何か、警察権とは何か。軍隊とは何か、自衛権とは何か。そういうことを整理する意味で、あの映画ってどうなんだろうねと言う議論は、あって然るべきでしょう、と思うのです。

 で、ブログを書いたことで私のところに「お前はそんな暇なことを考えているのか」とお叱りを頂戴するわけです(笑)。いやいや、私はゴジラ退治をどうしようと言うことを申し上げたいのではない。国家とは何か、国家の独立とは何か。そういうことをきちんと整理しておかないと、憲法9条を改正して国防軍を持つとか、自衛権を行使するのはどうすべきかとか、そういう議論の本質が分からなくなると。

 国権の最高機関である国会で、定義もきちんと分からずに議論すること。これは国民に対する冒涜だと、私は常に思っているんですよ。でも、そういう人がいっぱい、いるわけですよ、国会議員でも。

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