本物に触れたら、誰かと語り合いたくなる

黒川:精魂込めてつくった和菓子をお客様にお届けする、その間に立つのは売り場の人間です。

 売り場で働く彼ら彼女らが、生き生きとした顔で丁寧にお客様に商品をお渡しする。これがとても重要です。

 商品を買って下さったお客様が「今日はなんだかいい買い物ができた。早く帰って食べてみたい。家族と一緒に食べてみたい」と楽しみに帰宅され、そして実際に召し上がりながら「おいしいね」と会話が弾む。私たちはそんな存在でありたいのです。

 映画でも音楽でも、本当にいいものに触れたら、誰かと語り合いたくなりますよね。

 それと同じように「今日の和菓子、おいしいね。これ、どういうものなの?」と会話を生み出すような。そんなシーンをいつも描いています。

山田:なるほど。そして、その「おいしさ」についても言語化されているそうですね。

黒川:「少し甘く、少し硬く、後味よく」と言っています。我々がつくっている和菓子というのは、今の世の中のスタンダードよりかは少しだけ甘いかな、と。

 さらに、今は柔らかい食感が主流かもしれませんが、うちの餡子の具合はやや硬い。そして最後に挙げた「後味よく」が最も大切にしたい部分で、口の中に長く甘さが残らないように心がける。

 ここでも意識したのは、「シンプルな言葉にまとめる」ということです。虎屋という会社も1000人近い所帯になりましたが、私のような年寄りも、最近入ってきてくれた若者も、皆が同じ目標を目指せるということが大事であると考えています。

山田:老舗の看板に甘んじず、全員が目指すべき方向性を明確に示されてきたことがよく分かりました。

(後編に続く)

 アパレル業界の常識を根底から覆すものづくりに挑戦するブランド「ファクトリエ」。

 店舗なし、セールなし、生産工場を公開、価格は工場に決めてもらう——。これまでのアパレル業界のタブーを破って、日本のものづくりを根底から変えようとしている。

 ファクトリエはどのように生まれ、そしてどのように日本のアパレル業界を変えてきたのか。

 つくる人、売る人、買う人の誰もが、「語りたくなる」ようなメイド・イン・ジャパンの新しいものづくりを、一冊の本にまとめました。

 失敗を重ねながらも、一歩ずつ、「服」をめぐる「新しい当たり前」をつくってきたファクトリエ。これまでの歩みを知れば、きっとあなたも新しい一歩を踏み出したくなるに違いありません。書籍『ものがたりのあるものづくり』は11月8日に発売します。
 また『ものがたりのあるものづくり』の発売を記念して、日本各地で著者の山田敏夫氏によるトークイベントを開催いたします。ご興味のある方は是非ともご参加くださいませ。

■東京
11月13日(火)7:00-「転職にも起業にも効く!逆境からの仕事の創り方

■東京
11月19日(月)19:00- 中目黒蔦屋書店 (お申し込みは電話受付:03-6303-0940)

■福岡
11月9日(金)19:00- 六本松蔦屋書店「『ものがたりのあるものづくり ファクトリエの「服」革命』刊行記念トーク・サイン会」(お申し込みは電話受付:092-731-7760)

■熊本
11月10日(土)16:00- 長崎書店「『ものがたりのあるものづくり ファクトリエの「服」革命』刊行記念トーク・サイン会」(お申し込みは電話受付:096-353-0555)