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消費者は変わっているのに、企業は…

山田:単純に「職人を救う」というレベルではなく、自分たちの豊かな日常のために、自分たちがこれから生きる世界のために、消費行動を真剣に選択していかないといけない時期に来ていると思っています。

齋藤:環境問題にも深く関わります。このまま使い捨て型の消費を続けていくと、地球に住めなくなることは明白で、欧州ではプラスチック製品の廃止が進んでいます。日本は古来、自然由来の材料をうまく活用する技術に長けていたのだから、もう一度、そういった文化を取り戻すべきです。

 消費者の意識はかなり変わってきています。

 若い人を中心に、「ものを長く大切に使おう」という価値観が広がっているように感じます。半面、変わっていないのは産業側です。大量消費を前提に利益を生む20世紀型の構造から早く脱却しなければ、世界に愛想をつかされてしまいます。

山田:環境問題は待ったなしですね。パリ協定を守らなければ、2100年までに地球の気温は4度上昇し、日本の浜辺の97%は消失するという試算もあるそうです。

 影響力の大きい大企業から抜本的な対策を取ってほしいと切に願いますが、まずは僕たちも、できることをやっていく。作り手としてはできるだけ環境負荷の少ないものづくりを目指しています。

 例えば僕らがTシャツやジーンズにオーガニックコットンを選ぶのも、その二酸化炭素吸収量が、化学肥料使用のものより2〜3倍ほど高いと聞いたからです。値段が高いと言っても、価格差にして1000円程度の違いであれば、僕はオーガニックコットンを選びたい。消費者として何を選び、何を支持するかが、未来の世界の風景を決めていくはずです。

齋藤:そういう意識を持たなければ、ご先祖さんに申し訳ないですよ。こんなに素晴らしい文化を作り上げてくださったのに、自分たちの代で手放していいのか。

 長く持ち続ける消費文化として、一つ思い出したのは、私が一緒に仕事をしていた先代のエルメスの社長が「ラグジュアリーとは“直せる”ことだ」と言っていたことです。

 長く使うに耐える修理技術を備えることであり、使う側が「直してでも使いたい」と愛着を持てる価値を提供できること。それこそがラグジュアリーだ、と。

 本物のブランドというのは、決して値段が高いからブランドなのではなく、長く使える愛着という真のラグジュアリーを提供できるものではないかと思います。その意味で、日本のものづくりはもっと本物のブランドに育っていける。私はそう信じています。

山田敏夫氏の「ファクトリエ」の歩みをまとめた『ものがたりのあるものづくり

 アパレル業界の常識を根底から覆すものづくりに挑戦するブランド「ファクトリエ」。

 店舗なし、セールなし、生産工場を公開、価格は工場に決めてもらう——。これまでのアパレル業界のタブーを破って、日本のものづくりを根底から変えようとしている。

 ファクトリエはどのように生まれ、そしてどのように日本のアパレル業界を変えてきたのか。つくる人、売る人、買う人の誰もが、「語りたくなる」ようなメイド・イン・ジャパンの新しいものづくりを、一冊の本にまとめました。

 失敗を重ねながらも、一歩ずつ、「服」をめぐる「新しい当たり前」をつくってきたファクトリエ。これまでの歩みを知れば、きっとあなたも新しい一歩を踏み出したくなるに違いありません。書籍『ものがたりのあるものづくり』が発売されました。本書の発売を記念して、著者の山田敏夫氏によるトークイベントを開催いたします。ご興味のある方はぜひご参加くださいませ。

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1月15日(火)19時~ 「『ものがたりのあるものづくり ファクトリエの「服」革命』刊行記念 著者トークイベント」(店頭受付か電話受付03-3575-7755、もしくはリンク先からオンラインにてお申込みを受け付けております)