アマゾンにも勝てる「あなたから買いたい」
山田:僕は実家が洋品店で子どもの頃から店番の手伝いしながら両親の接客を見て育ちました。そして最近よく思うのは、「あなたから買いたい」と思わせる力が最強だということです。
身内をほめるのもなんですが、実家の近くにイオンモールがいくつもできてもなお生き残ってこられたのは、父と母が「あなたから買いたい」と思わせる店づくりをしてきたからです。
僕がファクトリエで挑戦している「つくり手の思い」で服を買う仕組みづくりもそれに近くて、「あの工場のあの人がつくった服を買いたい」という愛着が起点となる消費をメジャーにしていきたいんです。
その文化が広がれば、アマゾンにも勝てると本気で思っていますし、愛着のある服は簡単には捨てなくなるから環境問題の解決にもつながります。
ビジネスは単にお金を稼ぐだけではなくて、その決断がどういう未来につながっていくかという美意識を第一にすべきだと思っています。
細尾:そして職人の美意識を高めていくことも大事ですよね。山田さんは提携工場で働く人たちが、委託のものづくりに頼るのではなく、オリジナルの自社製品を開発できる力を育てようとしています。「作業」が「クラフト」に変わるプロセスに伴走している。職人の意識レベルでイノベーションが起きているはずです。
山田:熱量は内側からでないと生まれません。だから自分たちが楽しむ仕事を生み出していくこと。これを一番大事にしています。「正しさ」よりも「楽しさ」を追求することが、結果的には正しさにつながる。そう考えています。
最後に細尾さんにシンプルな質問を。革新的な挑戦には苦労も絶えないはずですが、なぜ、くじけないのでしょう。
細尾:失敗も楽しんでいるからじゃないでしょうか。死なない程度の失敗はすべてプラスになると思っていると、すべてを楽しめる気がします。西陣織1200年の歴史の中では、僕の挑戦なんてささいな話です。先人が受け継いできたバトンをどう次に渡すか。それだけを考えて、走り続けたいと思います。
山田:走り続けるには何を残すべきか。その選択と決断、そして失敗さえ楽しむ心意気が大事なのだと教えていただきました。
アパレル業界の常識を根底から覆すものづくりに挑戦するブランド「ファクトリエ」。
店舗なし、セールなし、生産工場を公開、価格は工場に決めてもらう——。これまでのアパレル業界のタブーを破って、日本のものづくりを根底から変えようとしている。
ファクトリエはどのように生まれ、そしてどのように日本のアパレル業界を変えてきたのか。つくる人、売る人、買う人の誰もが、「語りたくなる」ようなメイド・イン・ジャパンの新しいものづくりを、一冊の本にまとめました。
失敗を重ねながらも、一歩ずつ、「服」をめぐる「新しい当たり前」をつくってきたファクトリエ。これまでの歩みを知れば、きっとあなたも新しい一歩を踏み出したくなるに違いありません。書籍『ものがたりのあるものづくり』が発売されました。本書の発売を記念して、著者の山田敏夫氏によるトークイベントを開催いたします。ご興味のある方はぜひご参加くださいませ。
- ■銀座蔦谷書店
- 2019年1月15日(火)19時~ 「『ものがたりのあるものづくり ファクトリエの「服」革命』刊行記念 著者トークイベント」(店頭受付か電話受付03-3575-7755、もしくはリンク先からオンラインにてお申込みを受け付けております)
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