失敗は、成功するためのアップデート

細尾:やはり、「固定概念からいかに抜け出せるか」だと思います。「西陣織は帯である」という固定概念を疑って、自力でアップデートする意識を持てるか。などと言いながら、僕も最初から今のようになれると想定できたわけでなく、手探りで試行錯誤した結果でしかありません。

 山田さんの著書『ものがたりのあるものづくり』を読んで深く共感できたのはそこで、とりあえず動かなければ何も始まらない。

 まぁ、10回中9回は失敗するのですが、その9回は決して失敗ではなく、10回目に突破するためのアップデートだったと考える。挑戦を繰り返すしかないと信じてやっています。

山田:職人やものづくりに携わる人たちが集い、ディスカッションする場づくりとして、「CRAFTS NIGHT」という取り組みも本格化するそうですね。

細尾:はい。「未来構想力」「伝達力」「科学・技術力」などをテーマに、2018年秋から毎月開催しています。伝統工芸の職人の地位をもっと向上させていきたいし、子どもたちの憧れの職業にしていきたい。

 そのためには職人が格好良くあり続けなければいけないし、感性を磨き続けなければいけない。「最強の職人」を育てるための寺子屋のようなイメージで続けていきたいと思っています。

山田:職人さんが直接、前に立って話すんですよね。結構、ストレスに感じる方もいるのでは。

細尾:ストレスだと思いますよ。でも、このストレスはチャンスでもある。風や抵抗を感じながら走り続けた人だけが得られる筋力みたいなものはあるし、未来のヒントも得やすいでのはないかと思います。

山田:ストレスを感じる時は多様性に触れている時だと僕もよく思います。「CRAFTS NIGHT」の参加者には職人以外の方も多いそうですね。

細尾:学生や科学者や医療関係者も来ています。僕たちが考える「クラフト」というのは、決して工芸だけに限らず、人が能動的にモノをつくる行為を指します。原始の時代、人が石を使って道具を作って火をつけた時から、道具は手の延長なんです。

 織り機だって最初は体を使って織るような形態から、木の織り機に発展し、工業化していきました。そして織り機メーカーが自動車メーカーになり、高度経済成長を支えた。

 つまり、人が手を使ってものづくりをする延長に、テクノロジーが生まれていく。クラフトの“孫”くらいにあたるのがテクノロジーなんです。

 僕は前々職は音楽業界にいたのですが、ジャズの有名奏者が「ヒップホップはジャズの孫だ」と言っていたのが印象的で、ものづくりの世界も似ているなと感じているんです。

山田:美意識の重要性も問われています。

細尾:格好付けた言い方になってしまいますが、やっぱり「美」は最大の軸だと思います。何をもって美しいとするかを考えることができるのは、きっと人間だけです。

 仮に火星への移住が本格的に始まったとしたら、「どんな世界をつくるか」という美意識が求められる。美意識を体現するための仕組みをつくれる経営や活動が重要だし、僕たちがやるべき仕事です。

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