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大学も企業も、人を育てる基本は同じ

 2018年4月の入学式以来、学生に本を読んでもらうことに力を入れていますが、「人を育てるのは『人・本・旅』である」という考え自体は、僕の全キャリアを通してずっと変わっていません。

 日本生命でも、ライフネット生命でも、APUでもそれは同じです。

 このほかに人間が賢くなる方法を僕は知らないので、「人・本・旅」は後輩や部下に伝え続けてきましたし、それが実践しやすい環境づくりにも努めてきました。

 例えばライフネット生命の時には、毎月「出口塾」を開いて、課題図書をみんなで読んで議論する活動をしていました。

 また当時はまだ珍しかったけれど、就業規則は「定年なし」で「副業OK」に。いろいろな体験を重ねたり幅広い人に会ったりするためには、複数の仕事をしたほうが効率的ですからね。同じ理由でクラブ活動休暇もつくりましたし、「旅」に出やすいように勤続3年毎に10日間のリフレッシュ休暇制度も設けました。

 「旅」で言えば、「出向も旅である」と考えています。

 僕は日本生命で働いていた時、様々な会社の人と会う機会に恵まれました。

 その中でも、当時の日本興業銀行の人は非常に魅力的でおもしろかった。それで、あそこに若い人を出向させましょうと上司に提案したら、まずはお前が行ってこいと言われたのです(笑)。

 実際に1年間出向してみて、「よその釜のご飯」を食べる経験は非常に有意義でした。何がよかったかと言うと、日本生命だけが世界ではないということが本当によくわかったのです。

 日本生命も出向先の企業もライフネット生命も、もちろん皆さんがいま勤めている職場も、すべて「特殊な一つの世界」でしかありません。スタンダードなどどこにもないし、そこだけが世界ではない。

 こうした一見、当たり前のことを深く理解できたのは、僕のキャリアの中でもかけがえのない経験でした。

 ですから、日本興業銀行から戻ってきてからは、社外の人に会うたびに、「日本生命の社員を出向させてくれませんか」と頼んでいました。

 当時はまだかなり融通が利いた時代だったので、外務省やJICA、日本輸出入銀行など 10社ほど出向先を開拓しました。