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「HONZ in APU」の様子。手前に座っているのはHONZ代表の成毛眞氏だ。

 2018年7月28~29日、台風接近により風が強まる中、「HONZ in APU」というユニークなイベントを開催しました。

 「HONZ」とは、僕が客員レビュアーを務める書評サイトです。代表の成毛眞さん、副代表の東えりかさん、編集長の内藤順さんをはじめとしたメンバーほぼ全員が別府に大集合し、HONZの成り立ちから本の選び方、書評の書き方までレクチャー。学生からも答えきれないほどの質問が飛びだし、なんとも賑やかな2日間となりました。

 またAPU(立命館アジア太平洋大学)の学生だけを対象にするのはもったいないと、翌7月29日には、大分に赴き大分市民との交流の場を設けました。

 僕は、教育に必要なのは「場をつくること」だと考えています。

 ただ「本を読みなさい」と言っても、読書体験に乏しい学生に行動に移してもらうのは容易なことではありません。必要なのは、「本っておもしろそう」と興味を持てるような場をつくることなのです。

 その点、HONZのレビュアーたちは生粋の「本好き」。読書の楽しさを語らせたら右に出るものはいません。そんな大人たちの話を聞き、ディスカッションすれば、それまであまり読書をしてこなかった学生も本を開いてみようと思うのではないか、と考えたのです。

 僕自身、春には新入生向けに読書について30分のオリエンテーションを行いましたが、これも「場」のひとつです。このときは、基本的に「本の選び方」について話しました。

 まず、入学式で紹介したような古典は手放しですすめますが、比較的新しい本を読みたいなら新聞の書評をチェックしてください。なぜかというと、新聞は何百万部も刷っている影響力の大きなメディアで、しかもレビュアーが本名で書いているからです。

 変な本を紹介したりズレた論評を書いたりしたら、純粋に「かっこ悪い」。真剣に書くインセンティブが働きますから、信頼に値する情報だと考えられます。

 書評というと、若い皆さんはAmazonなどのレビューを参考にすることが多いのかもしれません。これに対しては、一橋大学の楠木建先生の言葉を借りて、「名前すら明らかにしない人が好きなことを書きなぐったコラムを、まじめに読む価値があると思いますか?」と話しました。

 少なくとも新聞の書評ほどの精度はないと思います。

 店頭で手に取った本を読むかどうか悩んだときは、最初の10ページを立ち読みしてください。

 本は、著者が「ぜひとも読んでほしい」と強く願いながら書いています。書き始めの10ページはもっとも気合いが入っているわけで、おもしろいはずなんです。万一そこでおもしろいと思わなければ、最後まで読んでもつまらない本である可能性が高い。つまりその本を読んでも時間のむだ、と判断できるのです。

 前書きと後書き、目次をチェックする人も多いですが、本の概要は分かっても「おもしろいかどうか」までは分からない、というのが僕の持論です。それに僕自身が本を書くとき、前書き、後書きは最後に書くのです。「やっと書き上がった、やれやれ」と気が緩みきった状態で(笑)。

 だから前書きや後書きではなく、1章のはじめの10ページで判断するのがいいと思います。

 このように、本を選ぶのは簡単です。古典もしくは新聞の書評から選び、最初の10ページをチェックしておもしろそうだとワクワクするものを読んだらいい。ジャンルは問いません。「好きこそ物の上手なれ」と言うように、好きな本を読むことがいちばん学びになりますから。……と、新入生にレクチャーしたのです。

 APUのライブラリー(図書館)は、和書はもちろん洋書も充実しています。さらには「AP言語」と呼ばれるスペイン語やベトナム語、インドネシア語などの書籍もそろっている。

 僕の講義を聴き、HONZイベントに参加した学生たちがこれからどんな読書家になり、APUのライブラリーに足を運ぶのか、とても楽しみです。