経済界の人でありながら、大学になじめる希有な人間性

 企業のトップを経験した改革者というだけでなく、大学運営においては学識を持っていることも重要でした。

 大学は、教育・研究、学問の府、知的集積の場です。知識人として構成員が相互にリスペクトするためには、学識が必要です。出口さんは、経済人にしてはその点を超越的にクリアしていました。幅広く深い学識を持ち、多くの著作もある。さらにそれらの知識を生かし、自分の頭で考え、実行に移した経験まであるのですから。

 また大学という場と出口さんの人柄の親和性が高かったのもポイントでした。

 民間企業の方とお話しすると「大学経営なんて生ぬるいのでは?」と言われることもありますが、とんでもない! 知的探求者としてともすれば批判的で弁が立ち、しかも何より上からの指示命令を嫌う人間が(僕もですが)多数である組織をマネジメントするわけです。

 前々理事長である大先輩が「大学を経営体として考えれば、社員の半分が弁護士の会社のようなものだ」と冗談のように言っていましたが(弁護士のみなさん、すいません)、まさにその通りです。今まで、どれだけの民間企業経営者が大学運営にチャレンジし、そして去っていったことか……。

 しかし出口さんは、知識人――いや、「人」に対するリスペクトを常に忘れない「傾聴力」があります。自慢話も苦労話もしません。大学の一種独特なコミュニティーとの親和性が、経済人として奇跡的に高いと感じました。

 こんなふうに出口さんを推した理由はいくつもあるのですが、何よりも、彼のキャラクターが魅力的だったんです。常にひょうひょうとしているのに、どこかチャーミングで、いつの間にか、みんな彼のペースにハマっていく(笑)。

 面接や模擬講義などの選考を重ねる中で、その人間性にひかれていった。みんな、好きになっちゃったんです。