朝起きて元気だったら、働けばいい

 しかし僕は、年齢と仕事を結びつけて考えたことはこれまで一度もありません。

 朝起きて元気だったら、働けばいい。いくつになったら新しいチャレンジをしてはいけない、などという決まりはどこにもありません。朝起きて身体がしんどかったら、その時初めて、「辞める」という選択肢を考えればいいだけのことです。年齢フリーで考えるのが世界の常識だと思っています。

 60歳、65歳、70歳などといった切りのいい数字に惑わされ、自分に制限を設ける必要は全くありません。実際、世界を見渡せば、日本を除いて定年などという制度は存在しないのですから。

 それに僕自身は、「全くの異業種」に転じたという感覚もあまりありませんでした。というのも、ライフネット生命が、長く勤めた日本生命と「生命保険」というつながりがあったのと同様、今回は「ベンチャー」というつながりがあったからです。

 APUは、2000年に開学した若い大学です。東京大学が1877年、立命館大学が1900年、同じ県内の大分大学が1949年に設立されたことを考えると、明らかに新しい「ベンチャー大学」と呼んでいいでしょう。

 しかも、ただ新しいだけの「ベンチャー大学」ではありません。「教員、学生の半分が外国人」というのは、大学としてもおそらく世界初の試みです。

 また、「公用語が英語」という大学はたくさんありますが、英語と日本語の二言語が公用語でほとんどの科目を日本語と英語で授業を行っているのは、日本ではAPUだけです。しかも大分県別府市の山の上を切り拓き、(新キャンパスや新学部ではなく)ゼロから大学をつくったわけです。これだけでも、なかなかのベンチャースピリットを感じませんか。

起業も転職も直観で選べばいい

 「ベンチャーつながりがあるのはわかった。でも、覚悟をしていなかったのに引き受けるなんて、無謀過ぎるのでは」と思われるかもしれません。しかし僕は、起業や転職は、そもそも長時間熟慮して周到に準備するものではない、と考えています。

 それはなぜか。人間は動物ですから、人生で一番大切な決断は、パートナーとなるボーイフレンドやガールフレンドを選ぶことです。だって、パートナーを選ぶことは、自分の遺伝子と相手の遺伝子が混ざった子孫をつくる結果になるかもしれないわけですから。子育ては仕事より、明らかに「大仕事」ですよね。

 そんな大事な恋人を選ぶ時に、「身長、優しさ、職業、経済力、金銭感覚、……」などと必要条件のリストをつくって、上から順にチェックしていったりはしないでしょう。先に一緒に住む家を用意したりもしないでしょう。

 なんとなくいいなとか、一緒にいて疲れないなとか、まずはそんな直感で選ぶはず。

 その直感が間違えていたら「さようなら」をするし、まあこんなもんだろうと思えれば一生を共にする──。動物として最も重要な決断でさえ、その程度の感覚で決めているのだから、職業の選択などはもっと気楽に決めればいい、というのが僕の持論です。そして、置かれた場所(選んだ職業)で咲けなければ、広い世界に飛び出せばいいだけの話です。

 こんなことを言うと叱られてしまうかもしれませんが、僕の気持ちの中では、今回の学長選出は、「ちょっといいなと思っていた人に思いがけず告白された」ような気持ちがあったのです。加えて、あれだけダイバーシティ豊かなメンバーが満場一致で選んでくれたのだから、自分が精一杯やればきっとなにかしらお返しはできるだろう、とも考えました。