経営トップが事業計画を考えるうえで最も大切なのは、売上高の数字目標や、3カ年計画といった期間目標ではなく、グランドデザインだと思います。

 日本企業は事業計画を綿密に作る傾向がありますが、あまり現実味はないような気がします。計画経済のように目標通りに進むといったことは先ず起きないからです。

 計画に準拠して会社を経営することについて、私は極めて疑問に思います。

 ではグランドデザインとは何か。その描き方を通して、説明していきたいと思います。

方向の見極めから始める

 前提としてグランドデザインは数字で表すのは難しく、定性的な戦略としてつくるのがいいと思います。そしてグランドデザインの描き方には、いくつかの段階があります。

 1つ目は、世の中が傾向としてどのような方向に行くのかを考えることです。例えば、世界でより社会主義的な側面が強まるのか。あるいはより資本主義の拡大に向かうのか。経済は成長路線か、緊縮路線かといったことです。10年から20年先の遠い将来に向かって、「世の中はどのように変わっていくのだろうか」ということを、おぼろげながら描くこと。これが第一です。

 グランドデザインを考える際は、視点を目先に置いてはいけないと思います。船舶の航海でも、目先の波しぶきは無視して、「風と大波がこう来ているのだったらこちらに向かう」という見方をします。少し遠くを見ることが、グランドデザインの基本です。

 2つ目に、1つ目で考えた世の中の進路と、会社の事業内容を結び付けて考えます。世の中の動きに沿うように会社の方向性を定めるということです。

 そして3つ目に企業経営の具体論に入り、自社の方向性と資金や人材、事業ノウハウなどの経営資源を併せて考えます。例えば「この事業には集中的に投資しよう」、「あの事業には携わる人材を厚くしよう」など、社内の幹部同士で大きな方向性の共通理解をし合うことが重要です。見据える将来像は、短くても3年先の姿で、できれば5年先、そして可能なら10年先くらいまでを考えるといいでしょう。

自社の事業にフィットさせる

宮内義彦(みやうち・よしひこ)氏
オリックス シニア・チェアマン。1960年日綿實業(現 双日)入社。64年オリエント・リース(現 オリックス)入社。70年取締役、80年代表取締役社長・グループCEO 、2000年代表取締役会長・グループCEO 、03年取締役兼代表執行役会長・グループCEO、14年シニア・チェアマン(現任)。著書に『私の経営論』『私の中小企業論』(日経BP社)など。

 世の中が求める商品やサービスを生み出していくには、自社が持つ技術や人材などの経営資源で実現可能なのか。足りないとすれば、どんな手を打つのか。進むべき方向を定めて、道筋を描きます。そのために、場合によっては大胆な再編も必要かもしれません。多角的に検討することで、企業のグランドデザインが形となっていきます。

 グランドデザインなどと言うと、「10年先のことなどわかるわけがない」と反応があるかもしれません。確かにその通りで、3年先の社会ですら正確に予測することは不可能です。しかし、世の中の方向性と、それに伴う自社の進路を考えることは経営トップにとって、やはり重要なことだと思っています。