経営者は何かを実現できなければ存在する意義がありません。何か課題や問題があった時にも、「それに対してはこのようにすれば一番いい。先ずやってみよう」という形で、考えを実現していくことです。実はこれが一番難しいことでもあります。

実現できなければ経営者失格

 現実にはどうでしょうか。社内で課題が生じて、幹部を集めて「こうしよう」という解決策を決める。そこまでなら、どの会社でも、割と順調に進むでしょう。ところが対策を進めていくと、思ったよりも困難が伴い、順調には進まない。こうなると「困ったな」と動きが鈍る幹部・経営者が出てくるのです。「前例がない」「難しすぎる」「リスクが大きすぎる」など理由をつけて、動けなくなってしまいます。

 もちろん、やみくもに実行ばかりすればいいという意味ではありません。経営者は司令塔ですから、幹部や社員らと協力して、どんな状況でも最善の判断を下して、前に向けて実行しなくてはなりません。逃げてはならないのです。難問があると、本件は止めにするという選択肢はありますが、それが続くと何も生まない組織になって停滞してしまいます。

 考えることより、実行することは骨の折れる仕事です。しかし、実行、実現こそが経営者の醍醐味でもあるのです。やらないことへの言い訳はいくらでも浮かぶでしょうが、最もしてはいけないのは、一番大切な事項を後回しにしてしまうことです。中には「今、自社が抱えている一番の問題は何か」という点について、追求しない。そこに触れると、非常にやっかいな事項が浮かび上がってしまい、解決にはとてつもないエネルギーや資金を要する。それが分かっているから、あえて触らないというケースさえあるのです。

失敗への恐れで実行力を失う

 その背景には、「自分の任期中は穏便に進めたい」という経営者の“サラリーマン的”心理があります。敢えて「代表する」ことを強調しているのも、経営者の中にはそれに強くこだわっていないような人も見受けられるからです。

 社長、経営者と言っても任期は限られている。下手に失敗はしたくない。そんな心理が実行力を失わせていきます。社内や外部の評価を気にするとなおさらです。「何かを失敗した」という社長にはなりたくない。そうなるとたちまち「前例踏襲」が社長の仕事になってしまいます。