“妖精”に求められるチェックはISO準拠だけではない

 残念ながら、ISOに準拠しているだけでは、サンタのオモチャ安全確認は済まされない。

 多くの子どもがプレゼントを待っている米国ではこれと違うASTM F963という規格への準拠が求められるし、各国独自に設けている規制をクリアすることも必要となるのだ。

 日本でも、赤ちゃん用のオモチャには別途注意が必要だ。乳幼児が口に接触することにより健康を損なうおそれがあるおもちゃ(つみき、折り紙、ゴム製おしゃぶり、ままごと用具など)については、「食品衛生法」で定める有害物質の規制をクリアすることが求められる。

 例えば、折り紙であれば重金属1ppm以下かつヒ素0.1ppm以下、ゴム製おしゃぶりであればフェノール5ppm以下かつ亜鉛1ppm以下かつ蒸発残留物40ppm以下、などの規定値を超えてはならない。

サンタクロースがオモチャを安全に子どもに届けるには、各国の通商の細かな決まりごとに精通した多くのプロフェッショナルな“妖精”たちのサポートが不可欠だ。(写真:miradesign/123RF)

 すなわち、オモチャを安全に子どもに届けるには、各国の個別規制にも精通する必要がある。

 10億人の子どもが「お願い」する数億種類のオモチャに対し、国際標準ISOへの準拠を確認し各国規制へ適合性を検査するとなると──認証法規担当の妖精だけでも数千~数万人必要となるだろう。

 この認証法規担当の妖精は、現在の法令・規格だけを熟知していれば良いのではない。刻々と変化する世界のオモチャ関連ルールも把握する必要がある。

 2017年9月6日、欧州委員会は世界貿易機構(WTO)に対し、玩具安全指令における「削り取ることが可能な玩具材料(scraped - off toy materials)」に含まれる六価クロムの移行限界値を強化する提案を通知した。この提案は2020年頃から発効する見通しのため、今年はサンタが運んでもよいオモチャが2020年には「不可」となる可能性もある。

 さらに厄介なのは、いま世界では、国際標準に整合していない国内の強制規格を策定する動きが増えていることだ。

 WTOでは工業製品等の規格やその適合性を評価する手続きによって不要な貿易の障害を生じさせないよう「貿易の技術的障害(TBT:Technical Barriers to Trade)協定」というものを設けている。ここでは、各国が導入する強制規格案が、関連する国際標準に整合していない場合には加盟国に事前に通報(TBT通報)し、各国からのコメントを受け付ける義務を課している。

 この国際標準に整合していない国内強制規格の数(TBT通報数)が近年増加しているのだ。オモチャに限った実績値ではないが、2000年では607件だったTBT通報の数が2015年は1438件に上っている。

 今後この件数が増えれば増えるほど、グローバルな製造業は各国の規格対応のコストが増加し、サンタのオモチャ準備も複雑な適合性評価の作業を余儀なくされる。

 こうして、通商論点のひとつ「非関税障壁」の規格・規制の観点で、サンタクロースを支えているであろう妖精が果たしている仕事を見てみると、クリスマスにプレゼントが届くことへの感謝は、フィンランドから日本へマッハを超える速度で駆けつけてくれるサンタとトナカイに対してだけでは物足りないことが分かるだろう。

 今年のクリスマスは、認証法規担当や適合性評価担当の妖精たちにも労いの気持ちを!