2018年7月に日EUの経済連携協定(EPA)が署名されたほか、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11)も2019年初頭に発効する公算が大きくなっている。日本企業はこうした競争環境の激変にどう備え、どう使いこなすべきか。経済同友会の代表幹事を務める三菱ケミカルホールディングスの小林喜光会長に聞いた(今回はその後編)。

経済同友会の代表幹事を務める三菱ケミカルホールディングスの小林喜光会長(写真:古立康三、ほかも同じ)

FTAにおける関税以外のルールづくりについては、どのように考えていますか。

小林会長(以下、小林):私が今、一番心配しているのはデータ管理に関するルールです。

 アメリカの「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)などのプラットフォーマーは個人情報も含め、基本的には自由をベースにやっています。一方で、中国はサイバーセキュリティー法ですべて国で抱え込んで、情報は外へ出さないという考え方ですよね、EU(欧州連合)は、一般データ保護規則(GDPR)で、個人情報をベースに抑えていこう、と。

 そんな中、日本は個人情報保護法がベースになっているけれど、公正取引委員会が主導権を握るのか、政府がやるのか。米・中・欧の動きに対して、日本はどうすればいいのか。今後の21世紀の競争、データをベースにした競争はどういうことなのか。この議論は、まだFTAでは十分にはできていませんから、これが次の重要なテーマだと思っています。

 特に対中国ということを意識しないといけません。彼らはデータを自国に囲い込もうと考えていますから。中国の深センなどでは、あちこちにセンサーを付けていて、いろいろな場所で市民の顔認証がなされています。店に店員が誰もいなくても、顔認証で誰が何を買ったのか分かるという、すごい時代が到来しているわけです。

 X氏は何が好きで、毎日、何を買っているのか。映像コンテンツでは何を見ているのか。みんな分かってしまいます。こういったデータを、どのようにコントロールするのか、という問題に、これから直面していかなくてはならないのです。