経済の活性化につながると期待される自由貿易協定(FTA)。だが日本企業のFTA使用率は、実に5割を下回る。経済産業大臣やTPP担当大臣として、FTAの締結に尽力した衆議院議員の甘利明氏に、日本が抱える問題点について聞いた。日本企業はどのようにFTAを活用すればいいのか。そしてFTAの有効活用が日本経済に与えるインパクトとは。今回はその後編。

FTAの締結に尽力した衆議院議員の甘利明氏(写真:竹井俊晴、ほかも同じ)

――インタビューの前編「日本企業の半数以上がFTAの“宝の持ち腐れ”に」で甘利議員は、日本企業のFTA使用率の実態が45%と実に低いことに驚いていました。苦労して交渉を重ねてFTAの締結にたどり着いたとしても、それが使われていなければ意味がありません。これまでの通商交渉で、甘利議員の印象に残っているものはありますか。

甘利議員(以下、甘利):大騒ぎになったのは、日本政府が資金拠出する国際シンクタンク「東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA=エリア)」の提案をした時ですね。

 日本の大臣ってころころ変わりますが、ASEAN(東アジア諸国連合)域内の他国の大臣は、在職期間が一番短い人でも3年、長い人だと20年にもなります。みんな知り合いで、カラオケをしたり、ゴルフに行ったりしています。けれど日本の大臣が行くと、「この次の交渉もあなたが来るのか」と言われてしまう。

日本だけ、大臣が頻繁に変わってしまうと、交渉は難しそうですね。

甘利:そんな大臣たちを相手に、ERIAに関する日本の予算を提示したわけです。新参者の私が話し始めたら、ある大臣が「まあまあ、その話はいいから、後にしておいて」なんて言われました。

 私も頭に来ちゃったものだから、「日本の資金が不要なら、即刻取り下げて予算から外しますよ」と返したんです。相手側の大臣は真っ青になって「そんなこと言っていません。そうじゃないので勘弁してください」となりました。

 ことほどさように、日本の大臣は海外で甘く見られていたわけです。さすがに私は言いすぎたかもしれませんが(笑)、当時の日本人の通訳の人は、「こんなに胸がすっとしたことはありませんでした。溜飲が下がりました」と言っていましたね。

 やっぱり政治家というのは「ここで立場を逆転させてやる」とか、腹をくくって交渉に当たらないとなめられてしまいます。だから会合のしょっぱなで、こちらの覚悟を分かってもらう必要があると思いました。

 効果はてきめんでしたよ。その後は非常に有利に話を進めることができましたから。

 当コラムの執筆者の書き下ろし書籍『稼げるFTA大全』が発売されました。

 TPP11や日本EU・EPA(経済連携協定)。2019年には大規模FTA(自由貿易協定)が相次ぎ発効される見通しです。けれど、果たしてこれらの動きが、日本の企業にどんな影響を与えるのか、十分に理解している経営者やビジネスパーソンは少ないのではないでしょうか。

 本書で指摘しているように、「関税3%は法人税30%に相当」します。仮に、これまで輸出入でかかっていた関税がゼロになれば、それを活用するだけで、昨日と同じビジネスを続けていても、ザクザクと利益を生み出すことができるのです。ほかにも、海外企業のM&Aがよりやりやすくなったり、各国GDPの10~15%を占める「政府調達」に入札しやすくなったりするなど、FTAを活用することで、ビジネスチャンスはぐんと広がります。

 同時に、FTAのルールをきちんと守れていなければ、税関当局の指摘を受けてしまい、サプライチェーンが止まるという甚大な被害を受けることもあります。

 日本初、企業が「稼ぐ」ためのFTA攻略本をみなさんの会社の経営に役立ててください。