この斬新な「司法」ツールは、正規品メーカーや消費者が悪質な模倣品業者を訴えやすくなるためのものだ。

 この仕掛けの裏には、中国の模倣品業者の「再犯率の高さ」がある。

 中国では「行政」ツールでは模倣品が減らないことが問題となっている。一度処罰されても、なに食わぬ顔で同じ事業者が模倣品の生産・流通を再開しているのだ。まず、刑事訴追が甘く、刑事移送される案件が少ない。そして行政罰の過料が低いため、「罰金はビジネスコストのひとつ」「罰金より多く儲ければよい」という意識でいるのだ。

 そこで、「司法」すなわち訴訟による模倣品対策を強化することが期待されている。

「特許権」侵害は訴えても「商標権」侵害は訴えない日本

 ここで気になるデータがある。知的財産の侵害に対する裁判の数だ。

 中国における知財侵害の民事訴訟の原告を国別に数えたのが以下のグラフだ。

■中国における「商標権侵害」の民事訴訟 原告国別案件数(2016年)
(出所:IP House統計データ)
■中国における「特許権侵害」の民事訴訟 原告国別案件数(2016年)
(出所:IP House統計データ)

 スマートフォンや自動車関連など多くの企業が活躍するアメリカや、アパレルなど高い価値のブランド製品を展開するフランスなど、中国で知財侵害の被害を受けている国々が名を連ねるこのランキング。ある一国を除き、原告となっている数の順位は「特許権」「商標権」ともほぼ同じとなっている。

 その例外の国が、日本だ。

 日本企業は「特許権」の侵害には多くの裁判を起こすのに、「商標権」の侵害にはあまり裁判を起こしていない。

 日本企業は、商標権については訴訟による損害賠償を重視しておらず和解を優先しているとされるが……つまるところ、「ブランドを侵害されても、怒っていない」とも捉えられる。中国の知的財産政策の関係者は、日本企業による訴訟の少なさが模倣品業者を増長させているとも言っている。

 「技術は守るが、ブランドは守らない」───これが日本企業の現状だ。