SNS時代の信頼ビジネス

 21世紀のソーシャルメディアの幕開けで、すべてが変わりました。マーケターと消費者とのあいだの信頼構築の過程に地殻変動が起きたのです。好き勝手なコメントやフィードバック、レビューや評価、画像の投稿や「いいね!」を通して、人々は広範囲に自分の体験を共有するようになりました。「受け身の消費者」は参加者になり、ソーシャルな伝道師になり、簡単に騙されることはなくなり、失望させられると容赦なく攻撃してくる存在になったのです。

 信頼構築の事例で際立っているエアビーアンドビーの場合は、プラットフォーム自体への信頼と、ホストとゲストの絆への信頼が必要になります。プラットフォームにもコミュニティのなかにも、信頼が存在しなければなりません。制度への信頼という古いパラダイムと、分散された信頼という新しい時代を分ける大きな違いのひとつがこの点です。エアビーアンドビーの共同創業者のジョー・ゲビアは、人々をひとつにするデザインとテクノロジーに情熱を注いでいるものの、エアビーアンドビーはテクノロジー企業ではなく「信頼ビジネス」だと認めています。

 ユーザーがプラットフォームに求めるものはそれほど変わりません。ユーザーは、プラットフォームが悪いことが起きるリスクを減らしてくれることを望み、何かが起きたときにそこにいてくれることを望んでいます。

 インターネット上の世界には大勢の人が参加していますが、責任者が不在だったり、誰を頼っていいのかわからなかったりすることが多くあります。この新たな時代に、分散されたシステムにおける信頼に関して言えば、製品・サービス、またはニュースについて誰が真実を教えてくれるのか、最終責任は誰にあるのか、わたしたちは知っておく必要があるのです。

レイチェル・ボッツマン
作家、ソーシャルイノベーター。著書『シェア』(2010)で提唱した「共有型経済」は、タイムズ誌による「世界を変える10のアイデア」に選ばれた。2013年には世界経済フォーラムにより「ヤング・グローバル・リーダー」にも選出。ニューヨーク・タイムズ、ガーディアン、WIREDなどで寄稿編集者を務めるほか、インターネットとテクノロジーを通したシェアリングエコノミーの可能性やビジネス・社会における変化についてコンサルタントや講演などを行っている。またオックスフォード大学サイード・ビジネススクールで「協働型経済」コースを教えている。(Author photo: Max Doyle )

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