結局「ニューリテール」の未来はどこに行くのか?

 講座の最後は、今回何度も出てきた「ニューリテール」戦略の未来について、3人の私見を交えて議論しました。

シバタ:例えばAlibabaが進めるニューリテール戦略は、今後どう展開していくと予想していますか?

吉川:難しい質問ですね。今のところ、これまでECで培ってきた販売~決済~デリバリーの技術と知見をリアルに応用し始めたばかりなので。まずはどのジャンルから押さえていくかが今後の注目です。

滝沢:私の理解では、ニューリテールというのはデータを活用してオンラインとオフラインを融合させていこう、それでユーザー体験をよくしていこうという戦略です。

 今までは、O2O(オンライン・トゥー・オフライン)のような概念に代表されるように、オンラインとオフラインを「どうつなぐか」という考え方で戦略が立てられることが多かったように思います。

 しかし、オンラインもオフラインも結局は「顧客接点」の一つでしかありません。それぞれを分けて「どうつなぐか」を考えるのではなく、オンラインとオフラインを一体のものとして捉え、心地よい購買体験をどれだけ作っていけるかが成否を分けるんじゃないかと思います。

シバタ:ECビジネスで最も大変なのは、購買頻度を上げること。例えば、楽天市場やAmazonの購買頻度を見ると、普通の会員は月平均1回程度なんですね。年平均にすると12回しか使われていないのです。

 どんなサービスでも利用頻度は高ければ高いほうが良いので、小売に進出したい、それも食料品など毎日のように買うものを押さえたいという考えはすごくよく分かります。ライフタイムバリューを上げるためにも、ニューリテール戦略は欠かせない次の一手なのだと思います。

吉川:リアルな購買データを今以上に収集できれば、その時々の売れ筋商品も分かるようになるので、いずれはAlibabaが自社ブランドを作って販売するようにもなるでしょうね。

シバタ:そのパターンは、Amazonが典型的ですね。まずサードパーティーの店舗に商品を売ってもらい、売れ筋が分かってきたら自分たちで仕入れて安く売り、さらに自分たちでも作れると思ったら自社のプライベートブランドを立ち上げたりもします。

吉川:Alibabaがそこまでドラスティックにやるかは分かりませんが、EC企業がメーカーと組んで自社製品を作っていく流れは確実に出てくると思います。データを持っているほうが強いという好例ですね。

滝沢:中国の場合、データを集める前に壊れてしまうパターンもよくありますが(笑)。

吉川:そうそう。中国の会社は意思決定が速いから、ダメならすぐ撤退しますよね。逆に「動いたらすごいよ」という側面もあるので、大きな投資が得られたらすぐチャレンジする。そういう意味で、中国は楽しいですよ。

 小売の世界は“巨人”が多いので、成功するまでに時間的・金銭的に非常に大きな投資が必要です。だから、今勃興しているニューリテールのプレーヤーがどうやって巨人たちの間をかいくぐって成長していくのか。無人コンビニなんかは、決済だけでなく人工知能や行動追跡技術の進化も必要になる分野ですから、それらの進化と合わせて長い目で動向を見ていくのが大事になるでしょう。

シバタ:今回もありがとうございました。