購買体験の新パターンは無限!? 試行錯誤を重ねる新興勢力

 ここからは、中国における小売の最先端事例を紹介していきます。

 この分野を分類すると、大きく【店頭体験・店舗】向け、【オンラインマーケットプレイス】、【D2C】の3つに分けられます。今回は、この中で【店頭体験・店舗】と【オンラインマーケットプレイス】の2ジャンルについて、我々が注目する企業やサービスをピックアップしてみました。

【店頭体験・店舗】
■ 無人コンビニ

 先ほどAuchanを紹介しましたが、最近は本当にたくさんの無人コンビニ(無人店舗)が登場しています。例えば、フルーツのネット通販を手掛けるEC企業Zhongshan BingoBox technology Co.(チュウザン・ビンゴボックス・テクノロジー/中山市賓哥網絡科技)は、無人店舗「BingoBox」をオープンして2018年1月に追加で$80 Million(約80億円)の資金調達に成功しています。今後は国内で5,000店を開店する予定だそうです。

 決済方式は大きく4つあって、一つはセルフレジ形式の無人コンビニです。Alibaba出身の創業者が2017年に始めた猩便利(ゴリラコンビニ)などが有名で、商品のQRコードを専用アプリでスキャンするだけで買い物ができます。レジに並んで待つ時間がないので、出勤前やランチタイムはとても便利です。

ゴリラコンビニのアプリ画面と、商品に付いているQRコード(撮影は滝沢氏)

 2つ目はRFIDタグ方式で、商品に貼ってあるRFIDのシールを、店舗の出口にある専用の機器が読み取って決済するやり方です。イメージとしては、商品を持って駅の自動改札を通ると勝手に決済されるような感じですね。事前に顔も登録してあるので、顔情報と会計データが紐づいてモバイル決済され、大手家電量販店Suningなどが試験的に導入しています。

 3つ目は顔認証+画像認証+重量認証方式で、Amazon Goに近いやり方です。入店時に顔認証されて、商品を取るとカメラが検知するという形で、加えて正確性を高めるために棚から商品を取った時に重量認証されます。jian24(ジエン24/简24)という無人コンビニがこの方式を採用していて、手ぶらで入って商品を持って出るだけで決済が完了するものの、突然の閉店や故障が多くてまだまだスケールする段階ではないような感じでした。

 最後の4つ目は手のひら認証です。深センにあるスタートアップがAlibabaと提携して出店したTake Go(テイクゴー)という自動販売機は、手のひらを登録した上で、手のひら認証+電話番号の下四桁を入力すると商品が入っている棚のドアのロックが解除されます。一見先進的なようですが、棚の中にあるのは一般的な自販機と変わらない品ぞろえで、「手間の多い自販機」というような感じでした。利便性や購買体験向上を見据えてサービス開発をしている段階というより、まずは手のひら認証技術を試そうとしているのかなという印象です。

 それでもまず店舗を出して、実験と失敗を繰り返しながら進化させようとするところが中国らしい点です(滝沢氏)。

■ Hema Xiansheng(フーマー・シェンシェン/盒马鲜生)

 2016年3月、シリーズAラウンドでAlibabaから$150 Million(約150億円)の出資を受けたスーパーマーケットで、Alibabaのニューリテール戦略を体現したような最新型の店舗となっています。

 オンラインで注文された商品を置いておく物流倉庫や、普段アプリから買う人が新しい商品と出合うためのショールームなど、既存のスーパーにはなかったような設備や仕掛けがたくさんあります。食材の良さも売りで、海鮮物をその場ですくってその場で調理してくれるレストランも併設されています。まさに新しい購買体験を提供している好例です(滝沢氏)。

■ Dicos(ディコス/徳克士)未来店

 中国で有名なファストフードチェーンが、試験的に始めた無人レストランです。お客さんは机の上に貼ってあるQRコードを読み取ってWeChat経由で注文し、そのままWeChat Payで決済して商品を買うことができます。

 ここまでは普通のモバイル決済と大差ないのですが、ユニークなのは商品の受け取り方。商品を買うと暗証番号が発行され、お店に備え付けてあるロッカーのようなボックスに番号を打ち込むと商品を受け取れるんです。この一風変わった購買体験がウケて売上が上がっただけでなく、店舗の人件費もだいぶ削減できたというニュースが出ていました(滝沢氏)。

Dicos未来店に備え付けてある商品受け取り用ロッカー

【オンラインマーケットプレイス】
■ Meituan(メイトアン/美団)

 同社はライフスタイルにかかわるさまざまなサービスを提供している会社で、例えば大衆点評(ダージョンディエンピン)という日本の食べログのような口コミサイトを運営しています。他にも、レストラン予約やフードデリバリーサービス、旅行サービスや配車サービスなど多面的に展開しており、2018年4月にはシェアサイクルサービスを展開するMobike(モバイク)を$2.7 Billion(約2,700億円)で買収しました。

 各分野に競合がおり、例えばフードデリバリーのMeituan Waimai(メイトワン・ワイマイ)はAlibaba傘下のEle.me(エルミー)とシェアを取り合っている状況です。ただ、個人的にはMeituanのアプリUIがとても使いやすいと感じています(滝沢氏)。

■ yizhibo(イージーボー/一直播)

 これは2016年5月にサービスを開始したライブコマースのアプリで、毎日およそ1,000万人のユーザーが視聴、生放送1回の視聴者は最大450万人を達成しているそうです。立ち上げの翌月から約300人の有名人が生放送を開始し、知名度を高めています。ライブをAlibaba傘下のTaobaoなどECに直結させ、ライブコマースから商品購買をつなげる仕組みづくりを推進しています(滝沢氏)。