Googleも再参入。トレンドを汲んで攻める外資企業

 続いて紹介するのは、巨大なマーケットである中国に進出する外資企業の動きについてです。これまで、日本の小売企業は中国進出で幾多の試練を経験してきましたが、現地のマーケットニーズを汲んだ戦略で着々と地固めをする外資企業も増えているようです。

滝沢:近年の中国では「無人店舗」がめちゃくちゃ増えているんですね。例えばフランスのAuchan(オーシャン/欧尚)という会社は、AlipayやWeChat Payを採用することで商品の決済をすべてスマートフォンで行う無人コンビニを展開しています。

 お客さんはコンテナのようなお店の入り口でQRコードをかざして入店し、商品をスマートフォンでスキャンしてオンラインカートに入れて、退店時にオンラインで会計するんです。ただ、Auchanの店舗には店員が1人もいないので、スマートフォンの電源が切れてしまったら外に出れなくなってしまいます(笑)。

Auchanの無人コンビニ(撮影は滝沢氏)

シバタ:実際に出れなくなった人もいるんですか?

滝沢:はい、そういう話を聞いたことがあります。一応、緊急電話みたいなものがあるので、そこに電話して出してもらうようです。

吉川:新しい購買体験を提供しているという点では、欧州でスポーツ用品販売最大手のフランス企業INTERSPORT(インタースポーツ)が、AlibabaのTmallとの共同事業でオープンした「夢幻の店」も面白いですよ。

 2018年5月に北京でオープンしたこのお店は、天井のいたるところにカメラやセンサーが設置してあって、人の動きから商品の売れ筋まですべてをチェックしています。そうやって蓄積したデータがあるので、例えばお客さんがスポーツウェアをフィッティングするために鏡の前に立つと、「そのウエアを買った人にはこのランニングシューズがオススメです」というようなレコメンドが表示されたり、その場で鏡をタッチしながら他の商品を購入することもできるんです。

 もちろん、Tmallと連動しているので、決済はオンラインでできるし、購入した商品をホテルや家まで届けてくれるサービスもあります。

 このように、今後は中国に進出する(またはすでに展開している)外資企業が、AlibabaやJDと提携しながら「ニューリテール」を形にしていく流れが本格化していくかもしれません。先ほど話した自動車の自販機のように、購買データを収集できるのはAlibabaやJD、Tencentにとってもおいしい話なので。

シバタ:そういえば、2018年6月には米GoogleもJDに$550 Million(約550億円)の投資を実施して、東南アジア市場の拡大を狙うと発表しました。JDの企業規模を考えると550億円くらいの投資は微々たる額でしょうが、Googleはこれまで中国政府とやり合って参入を拒まれていましたから、エポックメイキングなニュースだと思います。

吉川:一方のJDはこの連携をきっかけに、Google経由でアメリカやヨーロッパへの越境ECをやっていくと発表しています。今後の展開がどうなるか楽しみです。

シバタ:次は日本企業の例も見てみましょう。「無印良品」を展開する良品計画が、ホテルを展開しているという話題です。吉川さんは北京にある「MUJI HOTEL BEIJING」に泊まったことがあるそうですが、どうでしたか?

吉川:よかったです。宿泊費も1泊1万5,000円~2万円くらいで、北京の中ではそれほど高くないですし。

 日本にMUJI HOTELがないので(※日本では2019年に東京・銀座でオープン予定)、「なぜ小売の話でホテルが出てくるの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、もともと良品計画は上海にカフェを作り、それから深センや北京にホテルを作っているんですね。だから、小売業で知った中国のマーケット動向を、ホテルのような接客業にも応用しているわけです。

 そうやって建てたMUJI HOTELのコンセプトは「アンチゴージャス・アンチチープ」。高級過ぎず、安物っぽくないという意味で、これが中国の人たちにウケているそうです。

MUJI HOTEL BEIJINGの様子(撮影は吉川氏)